ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の価格が9月15日から約5500円(1割程度)値上されます。値上げは消費者に嫌われるものですが、PS5の値上げについて、ネットでは「日本の軽視」などというような厳しいトーンの意見が続々と並びます。なぜここまで非難されるのでしょうか。
 
 20年以上の取材を振り替えても、ゲーム機の「値下げ」ならともかく、「値上げ」というのは記憶にありません。ソニーに過去の値上げについて問い合わせてみると、「海外で例があるかも……」とのことですが、異例中の異例であるのは間違いないでしょう。とはいえ円安が加速する中、放置すると問題になる可能性もあり、同時に「値上げ」は、断腸の思いだったと推察されます。
 
同時に重要なポイントもあります。世界のゲーム市場は右肩上がりで成長している一方、日本市場の家庭用ゲーム機市場は、頭打ちが続いていて、日本の価値が低下していることです。
 
さらに日本におけるソニーの家庭用ゲーム機を見ても、日本の苦戦は明らかです。PS2は世界で1億5000万台を出荷し、うち日本で2000万台以上とヒットしました。しかしPS4は世界で1億1000万台以上を出荷したものの、1000万台程度にとどまっています。
 
つまり数字(決算)を追うと、「日本市場を優先しろ」「日本は特別」という意見が妥当なのかは、疑問なのです。
 もちろん、私の個人的な感情だけをいえば「日本市場は優先してほしい」とは思います。しかしそれは「成長する海外市場を軽視しろ」という意味になります。つきつめれば「日本は他の国とは違って特別である」という、他国・他地域を下に見てしまう感情が、どこかにあるのではないでしょうか。数字(データ)が日本の没落を示しているのに、自国を特別視する感情こそ、“重い病”といえるのかもしれません。
ゲーム市場が世界的に成長するということは、相対的に日本が特別でなくなるという意味です。少子化が進み、移民への抵抗が強いとされる日本は、今後も人口減の加速が予想されます。それは日本のゲーマーやゲームファンが減少することを意味します。
日本の経済的な“地盤沈下”は想定できることですが、実際にゲーム市場から日本の衰退の流れを感じるのは、寂しいものです。
 
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/20220828-00312354