2018年に福岡県の郵便局に勤めていた男性が自あぼーんしたのは保険営業のノルマに対する厳しい指導が原因だとして、遺族が当時の上司と日本郵便に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、福岡地裁であった。

 小野寺優子裁判長は、上司の指導はパワハラに当たり、同社にそれを放置した安全配慮義務違反があったと認定。ただしパワハラと自あぼーんとの因果関係は認めず、請求は棄却した。

 判決によると、男性=当時(48)=は窓口営業部の課長代理だった。上司は部長で、18年6月ごろから営業実績が低い男性ら社員に「ゼロは許さん」などと大声で指導していた。

 同11月、男性は部長から「今月実績がなかったらどうするのか」と迫られ、「できなかったら命を絶ちます」と発言。3日後、部長のパワハラ内容について記した遺書を残して自死した。部長は懲戒処分を受けて自主退職した。

 判決は「指導の範囲を超えた叱責(しっせき)で、違法なパワハラと認めるのが相当」と指摘。部長は過去に2度、パワハラとセクハラで懲戒処分を受けており、同社には「言動に注意を払い、指導・是正すべき義務があった」と安全配慮義務違反を認めた。

 一方、男性には自あぼーん直前までうつ病など精神の不調を示す言動がないとして、「部長とあぼーん違える覚悟で、自らの意思で自死を選んだ可能性を否定できない」と遺族の主張を退けた。

 判決後、遺族側の弁護士は「自あぼーんとの因果関係が認められなかったのは納得できない」と述べた。同社は「パワハラのない職場づくりに向けて引き続き社員教育を徹底する」と答えた。

 日本郵政グループでは翌19年に大規模な保険の不正販売が発覚した。 (小川勝也、宮崎拓朗)

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