https://news.yahoo.co.jp/articles/b257507235bdf24671ec87fbde0c3b89fef0bf36

米国成人の4割が肥満、2型糖尿病罹患率15%の州も

その数を知って、言葉を失った。米疾病予防管理センター(CDC)によれば、米国では成人の5人に2人が肥満だという。

CDCの定義では、体格指数BMIが30以上の人は肥満だ。もっとわかりやすく言うと、身長175cmの男性なら体重92g、身長167cmの女性なら体重84kgで、BMIがおおよそ30を超える。米国では40%の成人がこの基準を上回っているのだ。

ただし残念なことに、健康を巡るこの危機はあまり認識されていない。肥満になると、血圧が上昇し、アテローム性動脈硬化(余分なコレステロールがたまって血管が狭くなったり詰まったりする状態)を引き起こして心臓発作や脳卒中、心不全を招く。米国では、心疾患が依然として死因の第1位だ。

とはいえ、それは氷山の一角にすぎない。肥満は2型糖尿病の原因であり、2型糖尿病は腎臓病や下肢の切断、失明を引き起こす。ウェストバージニア州、アラバマ州、ルイジアナ州などでは、肥満を原因とする2型糖尿病が広がっており、罹患率はなんと15%に上る。

肥満はこのように代謝に影響を及ぼすだけではない。肥満の人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にもかかりやすい。さらに、体重が軽めの患者と比べて入院する確率も高く、死亡に至りやすい。

そればかりか、肥満になるとがんの発症リスクも上昇する。乳がん、すい臓がん、甲状腺がん、肝臓がんを含む13種のがんは、肥満と関連している。

米国では、肥満による医療制度への負担が推定でおよそ2600億ドルに上っている。肥満はいまやエピデミックと呼べるほどに拡大しており、早急の対応が必要だ。とはいえ、そう意識している人がいるのかどうかは疑わしい。肥満は多くの疾患の根底にあり、予防可能な死因のトップであるにもかかわらず、誰もがこの状況をただ受け入れているように思える。

しかし、こうした肥満の問題に立ち向かうために今すぐできることがある。まずは、保険会社が率先して、栄養指導や薬物療法にかかる費用をすべて補償する必要がある。現時点では、カバーされるかどうかは加入者のタイプによってまちまちだ。
肥満はさまざまな要素からなる疾患
徹底した行動療法が利用できるメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)など、保険が適用される場合でも、対象者のうち介入を受けている割合は1%に満たない。医療介護機関は、そうした指導などを、いまよりもずっと推進する必要がある。

また、肥満はさまざまな要素からなる疾患であり、その根本原因の理解を深めるためにはさらに研究を進めなければならない。米国立衛生研究所(NIH)は2022年度に、肥満研究に12億3000万ドルの予算を配分した。かなりの金額に思えるが、NIHの予算総額450億ドルに占める割合はわずか2.7%だ。これほどの規模に達した健康危機には、それよりはるかに多くの研究資金が必要なのは間違いない。予算の倍増は、どう考えても正当化されるはずだ。

米食品医薬品局(FDA)も、肥満対策で重要な役割を果たすことができる。新型コロナウイルス感染症のパンデミックのさなか、FDAは、ワクチンや治療薬をできるだけ速やかに提供するべく、バイオ製剤業界と協力するにあたって驚くほど柔軟に対応した。そのときと同じように、肥満の新しい治療薬にも力を入れるべきだ。

だからといって、安全性に関する承認基準を下げるべきだというわけではない。ただし、肥満の治療薬を「外見を改善するための」処置とみなしてはならない。それどころか、新しい治療薬は、心疾患やがん、糖尿病に関係してくるものとして、しかるべく取り組むべきだ。

肥満の蔓延は、すぐに解決するような問題ではない。今後10年以内には、米国に住む人の50%が肥満に、20%が糖尿病になる可能性がある。がんを発症しやすい人がどんどん増え、これまでにないウイルスが世界に広がるだろう。私たちは切迫感をもって、早急に肥満という問題に立ち向かわなくてはならない。