https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/wakusaka/2022-00720
そういえば、私はマンボウをまだ食べたことがない。魚類の、あのマンボウである。
ふと、幼き日の記憶をよみがえらせる。東北への出張から帰ってきた父が、当時小学生だった私にこんな土産話をこぼしたことがある。
「仙台が地元の同僚の実家に招かれて、マンボウの肉というのを初めて食べてきた。見た目はホタテだったんだけど、味はまさしく『マンボウ』としか形容のできないものだったよ」と。
肉薄すれば、まるで脳みそのように皺(しわ)が折り重なっている。繊維質が詰まっているということだろうか。こんな謎の質感の魚肉、見たことがない。
そして、やけに水っぽい。指の腹でなでるとプニプニとしていて、まるでスライムのごとき触感である。父が「見た目はホタテのようだった」と語っていたのもうなずける。まな板の上に、水分がしたたり落ちていく。ここまで水っぽい魚肉も、出合ったことがない。