生まれる子へ「ゲノム編集」どう思う? 「能力強化」で利用は否定的

 「ゲノム編集」技術をヒトの受精卵に使う場合に、その目的が「遺伝性疾患」の予防以外なら「反対」の人が大半を占める――。
そんな傾向が、国立成育医療研究センターのチームの調査から示された。
この技術について、社会全体ではまだ理解が進んでいないことも明らかになった。

 ゲノム編集は、生物の遺伝情報(ゲノム)を、狙いに応じて書き換える技術だ。

 これまでよりも簡単に、高い精度でゲノム編集ができる「CRISPR(クリスパー)/Cas(キャス)9」システムを開発した研究者らには、
2020年のノーベル化学賞が贈られた。

 この技術を使い、受精卵の段階で病気の原因となる遺伝子を修正できれば、難病を防げるのではないか、との期待もある。

 一方、病気の予防にとどまらず、子どもの運動能力や知能などを強化することに技術が使われる可能性もある。
「エンハンスメント」と呼ばれ、倫理的な問題を指摘する声もある。

 研究チームは、国民の意見や態度を明らかにする目的で、2020年8~12月にアンケートを実施した。

 調査では、一般市民(約2千人)、難病などの患者やその家族(約500人)、医療従事者(約1千人)の3グループのそれぞれに同じ内容の質問をした。

ゲノム編集とは? 一般市民は説明ほぼできず

 まず、受精卵へのゲノム編集について説明できるかをたずねた。

 すると、「説明できる」と回答したのは、一般市民で6%、患者関係者でも15%にとどまった。一方、医療従事者では50%だった。

 さらに、ゲノム編集という用語を「聞いたことがない」と答えたのは一般市民で52%にのぼった。

「エンハンスメント」利用には反対

 次に、具体的に想定されるいくつかのケースを示し、受精卵のゲノム編集について尋ねた。

 回答者には、ゲノム編集の利点やリスクを解説するビデオを見てもらったうえで、
それぞれのケースに賛成▽反対▽どちらともいえない▽答えたくない・答えられない――の4択で回答してもらった。

 すると、子どもの運動能力を高める「エンハンスメント」が目的のケースで、
ゲノム編集を使うことに「反対」と答えた人は、一般市民で70%、患者関係者と医療従事者では90%以上と、大半が否定的な意見だった。

 一方、遺伝性疾患の予防が目…

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https://www.asahi.com/articles/ASQ923HRZQ8KUTFL015.html