─ それに対して、日本銀行の金融政策をどう見ますか。

 宮内 日本はこの10年間、金融緩和を放置しています。金利を低くすれば、お金が安くなりますから資金需要が起き、金利を高くするとお金が高くなって資金需要は減っていくというのが金融理論です。

 しかし、この理論が日本では全く通用しないわけです。金利を下げても、タダにしても資金需要が全く起こらない。本来、資金需要が起こると民間金融機関が信用創造して経済が前に進みます。しかし、誰も借りに来ないわけですから、信用創造ができないと考えます。

 金融理論が通用しないことは、すぐにわかったはずなのに、同じことを10年続けているのは、経済政策の失敗だと思います。金利で経済は動かないことがはっきりしたわけですが、金融政策がダメであれば、次は財政しかありません。

 ─ 財政出動を行う必要があると?

 宮内 ええ。もっと財政政策を大きく打ち出すべきだと思います。ただ、日本は財政均衡至上主義で、国が潰れたとしても財政が均衡しなければいけないという主客転倒の政策を続けています。

 コロナ禍になって、やっと財政が出ましたが、コロナで落ちた分を何とかカバーしただけであって、根本的な財政出動は行われていないのです。

 その意味では金融政策の「一本足打法」で来たわけですが、この一歩足が折れているわけです。もちろん、日銀ばかりが悪いわけではありませんが、少なくともお金はタダだという経済はあり得ません。お金には値打ちがあるのだということで、例えば、個人が保有する現預金1000兆円に2%の金利が付けば、20兆円の富が生まれるわけです。それで経済を大きくする方がよほどいい。こういう議論になると、日銀が債務超過になるという話が出ますが、本質からずれています。金利を付けて円安を止めるということに尽きます。

 ─ 金利が動かない経済はあり得ず、本来の経済に戻ろうということですね。

 宮内 そうです。金利が上がると中小零細企業が困るという話もありますが、金利が払えないような「ゾンビ企業」を残すだけでは、日本経済はよくならないのではないでしょうか。

 本当に潰れてはいけない企業が潰れるのであれば、それは政策的に手当すればいいと思います。

 ─ 日本はある時からぬるま湯、現状維持で来てしまった面がありますね。それが「失われた30年」につながっている。

 宮内 「失われた30年」と言いますが、私は、日本は「アルゼンチン化」していると考えています。アルゼンチン経済は長年低迷が続いていますが、日本はついに、その道を歩み始めたのではないかと見ています。

 ─ かつて、アルゼンチンは世界有数の豊かな国でした。

 宮内 ええ。1945年に第2次世界大戦が終戦した時には、世界で最も豊かな国でした。戦争にも参加せず、欧州に食料を供給する余裕があったわけですが、結局それを天井に今日まで下がり続けています。ポピュリズム政治による放漫財政、経済政策の混乱などが起きて財政が破綻しました。

 日本も長期低落に入ったと見ていますが、それを抜け出す契機、兆候が見えてこないのが非常に情けないと感じます。

https://www.zaikai.jp/articles/detail/1932/2/1/1