死刑を支持できない理由

死刑に対するEUの根底にある考え方は明確だ。「いかなる罪を犯したとしても、すべての人間には生来尊厳が備わっており、その人格は不可侵である。
人権の尊重は、犯罪者を含めあらゆる人に当てはまる」というものだ。さらに、人権的観点のみならず、死刑は「不可逆性」という重大な問題を抱えている。
検察官や裁判官、陪審員、さらには既決囚を赦免できる政治家であっても、絶対に間違いを犯さないとは言い切れない。
にもかかわらず、死刑は一度執行されてしまえば取り返しがつかない。
冤罪(えんざい)による、あってはならない過ちを完全に回避するための最も確実な方法は、唯一、「死刑を廃止する」ことなのである。

EUは、犯罪者に刑罰を科すことの目的は、「本人に自らの過ちを理解させ、自責の念を持たせ、その人物を更生させ、最終的には社会復帰させること」にあると考えている。
この点から言えば、死刑では刑罰の究極的目標が果たせない。
さらに、死刑存続を擁護する際に用いられる、死刑の持つ犯罪抑止効果についても、欧州では死刑廃止後に重大犯罪が激増したという事実がなく、
米国では死刑廃止州より存置州の方が殺人事件の発生率が高いというデータもあり、死刑の犯罪抑止力は証明されていない。
また、同様に存続の大きな論拠となる、「命をもって罪を償う」という考え方については、死刑によっても被害者家族の喪失感が薄れることはない上、
生命の絶対的尊重という基本ルールを監視する立場にある国家も、そのルールの例外であってはならない、とEUは考える。

https://eumag.jp/feature/b0914/