https://news.yahoo.co.jp/articles/3cc895da2bbdb931c3c31b80b2a005558d56c621
メルカリ小泉会長「ミッションはまず社内にとことん発信すべし」
●世界と勝負できる「ESGのフォーマット」
市川祐子さん:前回、小泉さんはメルカリでESGに非常に早くから積極的に取り組んでいらっしゃったと伺いました。どういう過程だったのか教えてください。
小泉文明さん:ESGを打ち出していこうというのは僕が言い出しっぺなんです。社長室直下のプロジェクトとしてESGへの取り組みを始めたのは2018年のことで、マザーズ上場企業(当時)では、多分うちが一、二を争う早さだったと思います。グローバルな資本市場の流れの中でESGの文脈が出始めたタイミングで、これはすごくメルカリと相性がいいぞと、ピンときたんです。
市川:フリマアプリの運営というメルカリの事業は、まさにESG投資家が目指す循環型社会の実現のど真ん中にありますものね。そのことにいち早く気づき、メルカリの「ミッション」と「バリュー」を言語化して、グローバルに発信した。そこが素晴らしいです。
小泉:日本は「もったいない」という言葉が示すように、ESG的な文化がもともとあるのですが、投資家への説明のフォーマットがすごく日本ぽくて、グローバルに伝わりにくいんです。でも僕が思うに、ESGの良さは、同じフォーマットで投資家が世界中の企業をすぐに比較できるということ。だからそのフォーマットで発信したら、絶対に僕らは評価されるだろうと思っていました。
市川:ESGのフォーマットというのは、ESG投資家が使う評価基準のことですね。ミッションを核に価値創造ストーリーをつくり、E(環境)は二酸化炭素排出量削減とか、S(社会)なら人的資本とか事業に重要性のあるものを彼らの見やすいように整理し、サステナビリティーレポートとして開示する。
私が驚いたのは、メルカリのミッションとバリューをつくったのは社員がまだ10人くらいのときだということ。ミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」。バリューが「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」の3つ。創業時からはっきりしています。
小泉:ミッションとバリューは会社のカルチャーそのものについての発信ですから。
市川:そういった発信は、対投資家だけじゃなく、社員にもいい影響があったそうですね。
小泉:海外で働く社員から「メルカリのサービスを使ったことはなかったけど、プロダクトを通して世界をどう変えてきたかというところに共感したから入社したんだ」と言われたことがあって、ものすごくはっとしました。それもメルカリのサービスが展開されていない国の社員が、あらためて感じてくれたようで。これはすごい、ESG課題への取り組みをグローバルなフォーマットで説明する効果ってこういうことなのだなと。
市川:本当にいい話ですね。言葉にしたことで、いろんなメリットが出る。
小泉:言葉にしなくてもプロダクトを見れば分かるよねって考えがちなんですけれど、僕は共感を生むには言語化がすごく重要だと思っています。ESGへの取り組みもその文脈の一つですね。
ミッションはまず社内にとことん発信すべし
市川:メルカリは、ミッションもバリューも、すごく“生きている"感じがあります。昔の社是みたいな、額に入った古い言葉じゃない。なぜなんだと思います?
小泉:一つは実際の事業にしっかりひも付いているからだと思います。「地球環境のために木を植えます。本業と関係ないけど」みたいなのじゃない。企業の社会貢献は、事業活動を通じてやっていくことが、すごく大事。バリューにしても、「それは会社じゃなくて社長個人の価値観だろう」みたいな場合もありますけど、そうではなくて。トップが替わったらミッションやバリューも変わってしまうのでは、それこそサステナブル(持続可能)じゃない。
だから事業にひも付いていることがすごく大切です。人じゃなくてプロダクトとか事業とかミッションに向き合ってほしいんです。あとは経営陣が、ミッションやバリューをどしどし社内に発信すること。メルカリ創業期、社員10人くらいのときにミッションとバリューをつくったんですが、その頃、毎週のように定例会をやって、そのたびにミッションの話をしていました。社員に浸透するまでです。ミッションやバリュー、パーパスは、つくって終わりなら、最初からつくらない方がいいくらいですよ。
市川:ESGについても21年にサステナビリティーチームを発足、ESG委員会を設立と、かなりスピーディーに進化されています。そんな動きにメルカリ社員の方から好意的な反応を聞いたこともありますし、御社の動きに、他のスタートアップも刺激を受けていると思います。