NHK「外国人の不法滞在長期化」放送 弁護士らBPO申し立ても
9/10(土) 19:28配信
毎日新聞
NHKの国際ニュース番組「国際報道2022」の中で8月末に放送された「外国人の不法滞在の長期化」の内容について、入管問題に詳しい弁護士のグループが10日、東京都内で記者会見し、「明らかに事実と異なり、虚偽にわたるものや、不適切な説明や評価などがある」とする抗議声明を発表し、NHKに送付した。グループのメンバーの指宿昭一弁護士は「NHKの対応を見極めつつ、BPO(放送倫理・番組向上機構)への申し立ての準備も進めたい」と話した。【和田浩明】
この放送には、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(鳥井一平代表理事)も「出入国在留管理庁(入管)側の主張を一方的かつ無批判に伝えている」として6日付で抗議声明をNHKに送っている。
放送は8月31日に約10分半ほど行われた。在留資格を失ったが帰国しない「不法滞在者」が増え、在留期間も長期化しているとして、密着取材で入管の対応を報じた。入管職員が外国人に帰国の説得をする様子などを伝え、「人道上の理由から基本、身体拘束するなどして強制的に退去を強いることはない」と説明した。
しかし、10日に会見した弁護士らは「入管は法律上、強制的に退去を強いる権限を持つ」と指摘。実際に入管職員が強制的に外国人を航空機に搭乗させて相手国に退去させてきたとして、放送は「完全に事実と異なる虚偽」と批判した。
また、これに関連して「身体拘束は広く行われ、強制的に退去を強いるために、拷問的・懲罰的な手段として用いられている」とも指摘。具体例として、2021年3月に名古屋出入国在留管理局で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の例を挙げた。ウィシュマさんの死亡に関する入管庁の調査報告書によると、ウィシュマさんの収容を一時的に解く「仮放免」の申請を不許可にした際、理由の一つとして「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」と追記されたという。
NHKの放送では冒頭、21年1月1日時点の数値として、在留資格を失って日本に残る外国人は「およそ8万人で5年前と比べて2万人ほど増えた」と説明した。
弁護士らは、こうした外国人の数について、22年1月1日時点で6万6759人と入管庁サイトで3月に発表されていると指摘。5年前の17年と比べれば約1500人の増加とほぼ横ばいであり、21年からは約2割、1万6000人減少したのに、「(放送は)この点を包み隠そうとした」などと非難した。また、最近の水準は、20年前ごろの20万人超から大幅に減っているとも語った。
NHK広報局は10日、毎日新聞の取材に「抗議を受けた内容は現在確認を進めています。9月12日の『国際報道2022』の中でこのテーマについてお伝えすることを検討しています」とのコメントを出した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f761d8531c9895c23859cde27a398a3fdfe2dc65