【ソフトバンク】天王山3連勝導いた甲斐拓也の包容力 〝恩人〟が予見していた苦労人の成長

捕手業の奥深さにスポットライトを当てる勝利でもあった。首位ソフトバンクは14日の3位西武戦(ペイペイ)に6―1の快勝。覇権を争うライバルとの「天王山」に3連勝して、悲願のV奪回にまた一歩近づいた。先発の石川柊太投手(30)が7回途中1失点で6勝目。ここまで9敗と黒星が先行する右腕にとっては、大事な一戦で会心の白星となった。

 石川は戦前、こう明かしていた。「拓也が自分を気遣ってかけてくれる声に一試合でも早く応えたい」。1週間前、9敗目を喫した直後、甲斐拓也捕手(29)にかけられた言葉で背中を押された。「拓也が『毎週毎週、試合をつくってくれて本当に良くやってくれている』と言ってくれたんです。『見てくれている人は見てるんだ』って」。この日を含めて13試合連続で「5回100球以上」を投げてきた。石川自身、結果に満足してないが、チームのために腕を振り続けてきたからこその数字だ。

 石川を見逃さなかったのは、いかにも甲斐らしかった。「育成からはいあがってきた甲斐は人よりも悔しい思いをいっぱいしてきた。だから人の痛みや気持ちがよく分かる。それが生きるはずよ」。甲斐を一軍捕手へと押し上げた元ヘッドコーチの達川光男氏は、退任後に成長を予見していた。グラウンド内外の観察力がモノを言う捕手。身なり格好の変化、表情やしぐさ、声質から相手の機微を読み解き、いかにタイミングよく声をかけるか。「いつも見ているから響く声かけがある。それが信頼関係を深める」(達川氏)。

 いい時ばかりではない投手を盛り立てる捕手の気配り、包容力――。天王山3連勝締めの裏に、陰のヒーローがいた。
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