「ウマ娘」ブームで若者らが聖地巡礼…眼前にウイニングチケット、引退馬の姿「迫力ある」
競走馬の主産地・北海道日高地方を巡る競馬ファン層に変化が起きている。擬人化された往年の競走馬を育成するゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」を楽しむ若者らが押し寄せ、キャラクターの基になった引退馬のリアルな姿や戦績に触れ、心を躍らせている。自治体も観光誘致につなげようと動き出している。(大石健登、長谷裕太)
「初めて見る競走馬は大きくて迫力がありますね。『チケゾー』はのんびりしていてかわいらしい」
馬と触れ合える浦河町の施設「うらかわ優駿ビレッジAERU(アエル)」。大阪府吹田市からバイクで訪れた男性(40)は「チケゾー」こと、1993年の日本ダービーを制した名馬・ウイニングチケットを前にほほ笑んだ。
太田さんにブラッシングしてもらうウイニングチケット(1日、浦河町で)=大石健登撮影
https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/09/20220918-OYT1I50043-1.jpg
2005年からAERUで余生を送るウイニングチケットは、人間に例えると100歳近い32歳。存命中のGIホースでは最年長だ。健康状態は良好で、 厩舎 スタッフの太田篤志さん(36)は「手のかからない丈夫な馬。いつまでも元気でいてくれたら……」と首筋を優しくなでた。
引退から27年を経たが、ここ1年で以前の数倍のファンが訪れた。その原動力となっているのが「ウマ娘」だ。ウイニングチケットも、インターネット上で多くのイラストが投稿されるなど人気を博している。
ウマ娘にも登場する三冠馬・ナリタブライアン(1998年没)や、有馬記念を2度制したオグリキャップ(2010年没)など20基を超える馬碑がある新冠町の優駿記念館は、今年7~8月の来場者数が20年の同期比で2~3割増えた。
同館によると、かばんにウマ娘の缶バッジなどを付けた小中高生が家族や友人と一緒に訪れる姿が目立つという。運営会社は「ウマ娘を通して、馬たちの名前が若い世代に広く知られるようになった。今までと違うファンの形だ」とその変化に驚く。
自治体もブームに乗り遅れまいと、戦略を描く。帯広市が主催するばんえい競馬は、17~19日に関連イベントを実施。キャラクターを描いたうちわの配布や声優によるトークショー、グッズの特設ショップなどで来場者を出迎えている。
4日には、札幌市の道庁赤れんが庁舎前で開かれた観光物産展で、日高振興局がキャラクターの等身大パネルを設置。地域を紹介するパンフレットを配布するなどした。今後、7町ゆかりのキャラクター14体のパネルを公共施設に設置できないか、協議中という。
同振興局は「ウマ娘を通して日高の魅力を発信したい」と意気込んでいる。
一方、各牧場は急増するファンによるトラブルにも警戒する。日高地方には観光目的ではない生産・育成牧場が多く、見学を受け付けていない場合もある。
公益社団法人日本軽種馬協会などは、見学できる牧場を事前に運営サイト「競走馬のふるさと案内所」などで確認し、無断で立ち入らないなどのルールを順守するよう呼び掛けている。
AERUの太田さんは「競走馬は繊細な動物。しっかりと見学のルールを読んで節度を持って見守ってほしい」と訴えている。
◆ ウマ娘 プリティーダービー =ゲーム開発会社「サイゲームス」が運営する育成シミュレーションゲーム。
実在する競走馬を擬人化した「ウマ娘」と呼ばれる少女たちが、学園生活を送りながらレース制覇を目指す。テレビアニメや漫画など、多数のメディアで展開されている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220918-OYT1T50059/