最初は外務省の田中均・アジア大洋州局長が、 北朝鮮のミスターXと極秘に交渉を進めた。 田中氏は拉致被害者を取り戻すため、 現実的な交渉をしたので、 後に「北寄り」と批判される。
日本が1兆円払うとか、5人をいったん北に戻すとか、 すべて田中氏がミスターXに約束したことだと言われている。 しかし訪朝した時に、その流れを変えたのが、 官房副長官だった安倍さんだった。
一行はお弁当を持って平壌に行った。 北が出す物は何が入っているかわからず、 怖くて食べられないからだ。 そして控室で、盗聴されているのを承知で、 「拉致について金正日が謝罪しないなら席を立つ」 とわざと言って、金正日に謝罪させた、 というのは有名な話だ。
1兆円の経済協力にしても、 金正日は5人を返せばもらえると思っていた。 しかし日本は、8人死亡の報告がでたらめであるとして、 1円も払わなかった。 小泉さんのすごいところは、 前半の田中均さんの「北寄り」の交渉について、 細かく報告を受けて、それを承認していた。 だから田中均批判というのは的外れだと思う。 彼は上司の許可を得ていたのだから。
しかし小泉さんは、訪朝後は強硬派の安倍さんの意見を聞いて、 北に言わせれば、約束を破った。だましたのだ。 相手の弱みを見透かした、この外交は見事だった。
https://www.fnn.jp/articles/-/8362