■ ロシアの石油・ガス産業

 欧米メジャーが抜ければ、気象条件の厳しい海洋鉱区における石油・天然ガス生産は持続困難です。

 厳しい海洋気象条件下の原油・天然ガス鉱区の探鉱・開発・生産・輸送には、欧米メジャーとシュランベルジャーやハリバートン、独ジーメンスや英ロールスロイス、米ベーカーヒューズGE(ゼネラル・エレクトリック)など、欧米の最新技術とノウハウの総合力が必要になります。

 サハリン-2プロジェクトの場合、英シェルが抜ければ、LNGの原料となる天然ガス生産自体が困難になります。

 当面は一匹狼の技術者雇用により短期間凌げますが、持続的生産は不可能です。

 「欧米による対露経済制裁は効果ない」と書いたり・話したりしている評論家もいますが、現実は正反対です。

 対露経済制裁措置が強力に効いているがゆえに、プーチン大統領は外資に対して「ロシアから出ていけ」と言ったが(大統領令416号)、外資が出ていくと石油・ガス生産に支障がでることを理解すると、今度は「出ていくな」という矛盾した大統領令(大統領令520号)を乱発しているのです。

 上記より、欧米メジャーが撤退すればロシアのLNG構想は全面崩壊の可能性大となり、ロシアの国益を標榜するプーチン大統領自身が、図らずもロシアの国益を毀損していることが判明します。



日本政府は三井物産と三菱商事に対しS-2権益維持を要請し、三井・三菱はS-2新会社「サハリンスカヤ・エネルギア」に権益参加継続を決定。権益維持すべく、新会社に申請して許可されました。

 ここで重要なことは、商社の権益維持とS-2「サハリンスカヤ・エネルギア」による対日LNG供給は別次元の問題であり、直接の関係はありません。

 LNG供給契約は日本の需要家とサハリンスカヤ・エネルギア間の契約になり、三井・三菱はLNG契約の当事者ではないのです。

 三井・三菱が権益参加継続すれば対日LNG供給が継続されると考えているとしたら、それは大いなる幻想にすぎません。

 三井・三菱はS-2事業会社への出資者であり、事業会社が利益を出せば権益に応じて利益配分を受け、事業会社が赤字になれば権益に応じて赤字負担します。

 LNG工場自体は新ロシア法人「サハリンスカヤ・エネルギア」に移管されますが、英シェルは既にS-2プロジェクトからの撤退を表明しています。

 英シェルが抜ければ工場の保守・点検を担当する技術者もいなくなり、定期修理に必要な資機材も入手不可能になり、早晩LNG生産は低下・停止するでしょう。

 売上減少しても運転資金は必要ですから、事業会社は赤字となり、権益参加者は赤字負担を強いられることになります。

 筆者は、1~2年後にはこの様な事態が表面化するものと予測します。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cec033239da0e7cc986512f0d849856949710557?page=5