https://news.yahoo.co.jp/articles/850b196f3d8427c2ebbd51a6415c77b1e3e6a3b3

斎藤佑樹「ハンカチ王子と呼ばれるのは好きではなかった。野球の実力じゃないところにフォーカスされた」

2006年、夏の甲子園。2回戦で大阪桐蔭に勝った早実は3回戦で福井商を破ってベスト8へ勝ち上がった。この頃から暑いはずの真夏の甲子園で涼しげな表情のまま投げる斎藤佑樹にあるニックネームがつけられた。そう、"ハンカチ王子"である。
気がつけば「ハンカチ王子」に
いったい、誰が、いつからそう言い始めたのか、今でもわからないんです。大阪桐蔭との試合で小杉(太郎)くんにホームランを打たれたあと、取り出したハンカチ......というか、あれはハンカチじゃなくてハンドタオルなんですけど(笑)。あの四角く畳んだハンカチは何なんだという話になった、ということは聞いたことがあります。でも、それが最初かどうかはわからないし、そもそもハンカチに"王子"がついた理由は僕にはさっぱりわかりません(笑)。
あのハンドタオル、ほかにもいくつかあったんです。青いのがいつの間にか注目されていたみたいだったんで、これはもう、青を使わなくちゃいけないのかなと思わされましたね。もちろん青を使って勝ったから、「じゃあ、このまま」というような縁起担ぎの意味合いもありました。ただ、ほかの色もあったんですよ。何色があったかなぁ。黒があったのは覚えています。もし青いのじゃなくて黒を使っていたら、どうなっていたんでしょう(笑)。
もともと中学の時から、試合だけじゃなくて練習の時も小さなハンドタオルを使っていたんです。だから高3の夏、甲子園へ出ることが決まって、母(しづ子さん)に何枚か届けてもらったんじゃなかったかな。
畳んで使っていたことについても丁寧で上品だとか言っていただいたみたいですけど、そんな大層なことじゃなくて、丸めてお尻のポケットに突っ込むと厚みが出て気持ちが悪いんですよ。違和感があるというか......それに、次に使う時にもきちんと畳んでしまっておいたほうが使いやすいでしょ。それだけのことなんです。
正直、「ハンカチ王子」と呼ばれるのは好きではありませんでした。なぜかな......最初は興味津々、みんなで「王子ってなんだよ」とか言いながら楽しんでいたところもありました。そうやって盛り上がるのは嫌いじゃないんですけど、でも、それはあくまで大会中の話です。
大会の最中って宿舎にずっといるから、周りの環境がわからないじゃないですか。大阪にいる間は試合の合間に甲子園までほかのチームの試合を観に行ったり、甲子園の周りにあるショッピングモールでみんなと一緒に買い物をしたこともありましたけど。
新聞でもテレビでも取り上げられているのは知っていました。けど、大阪にいる間だけの話だと思っていたんです。東京に戻ったらそんなに騒がれることでもないだろうって......でも、東京でもものすごい騒ぎになっていたらしく、のちにその真っ只中に放り込まれた時には、さすがに楽しむという次元じゃなくなっていました。
やっぱり、選手として見てほしかったという気持ちがあったんだと思います。僕は小学生の頃から有名になりたかった。でもそれは野球選手として活躍することが前提です。なのに甲子園でハンカチ。
ハンカチを使ったら、野球の実力じゃないところにフォーカスされた。これってたまたま僕があのハンカチを使ったからで、注目されたんじゃないかと思ったのかもしれません。
甲子園通算2本目のホームラン
3回戦の福井商との試合は、あまり苦労した記憶がありません。覚えているのは僕が打ったホームラン(笑)。5回に1点を先制されたあと、4番の後藤(貴司)が同点スリーベースヒット、5番船橋(悠)の勝ち越しツーランホームラン。で、6番の僕がセンターのバックスクリーンへホームラン。アウトコースの真っすぐ、一点張りで振っていったんですよ。気持ちよく振り抜けた感触が残っています。
春のセンバツでも、レフトへのホームランを打っているんですけど(関西との2回戦の引き分け再試合)、春も夏も両方ともヤマを張って打ったんです。でも闇雲に狙い球を絞っていたわけではなく、いつしか相手のクセが見えてくるんですよね。これは真っすぐ、これはスライダー......で、もしスライダーが抜けてきたら、こういうイメージで振ればホームランを打てるなとか、そうやってヤマを張って、実際に打ちました。