刃物手にした男が「一緒に死ぬしかねぇ」 バス乗客救った4人の行動
2022年9月21日

バスの中で乗客を刃物で脅した男を取り押さえたとして、埼玉県警川口署は乗客2人とバス会社の運転手ら2人に感謝状を贈った。男は酒に酔っており、危険な状況だったが、数十人の乗客にけがはなかった。
感謝状を贈られたのは乗客の野口大介さん(42)と小林良紀さん(32)、バスを運行する国際興業(本社・東京都中央区)社員の細川正大さん(46)、運転手の野元浩之さん(61)。

8月5日夜、JR西川口駅(川口市)を出た直後の路線バスで事件は起きた。座席の細川さんに男がカッターナイフ(刃渡り8・2センチ)を向けて言った。「一緒に死ぬしかねぇんだよ」
自社のバスにたまたま乗っていた細川さんは、男を刺激しないよう運転席に向かい、停車を求めた。野元さんが応じ、110番通報した。2人が会社のバスジャック訓練で学んだ手順だ。

「俺はここで死んでも良いんだ」

男はぼそぼそと言いながら、バス後方に向かった。

その時、野口さんがとっさにナイフを持つ男の手をつかんで一緒に床に倒れ込み、取り押さえた。バス停から独り言を話す男を警戒していた。近くの小林さんも足を押さえつけた。警察が来るまでの約10分間、男はナイフを放さなかった。銃刀法違反で現行犯逮捕され、「半分脅しのつもりだった」と供述したという。

騒動後、後方にいた女性が野口さんに言った。「目が合い、こっちに向かってきていた。お兄さんがいなかったら刺されていた」

川口署の岩崎茂署長から感謝状を受け取った野口さんは「これからも注意していきたい」、小林さんは「こうした体験を今後に生かしたい」と話した。(有元愛美子)

https://www.asahi.com/articles/ASQ9P316JQ95UTNB011.html

感謝状を受け取ったバスの乗客と運転手ら。左から野口大介さん、小林良紀さん、細川正大さん、野元浩之さん=2022年8月23日午後1時46分、埼玉県警川口署、有元愛美子撮影
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