問題は今後急激な円安が進行した場合、日本政府が打つ政策手段が
限られていることではないか。一つの手段は「円買い・ドル売り」の為替介入だが、
筆者はその効果に少々疑問を持っている。

まず、円買い介入の原資は日本の外貨準備でその約1.3兆㌦が上限となるが、
1日の為替取引量は膨大だ。例えば、国際決済銀行(BIS)は世界の為替取引量に
関する調査結果を3年ごとに公表している。それによると、2019年4月の1日平均の
取引量は6.6兆㌦(1㌦=110円で726兆円)にも達する。うち、主要通貨別の取引量や
シェアの第1位は米ドルとユーロの取引で、取引量は1.6兆㌦(同176兆円)かつシェアは
24%。また、第2位は米ドルと日本円の取引で、取引量は0.87兆㌦(同96兆円)かつ
シェアは13.2%だ。

この取引量に日本の円買い介入が影響を及ぼすには、数兆円以上の為替介入が
必要だが、仮に10兆円規模なら、数回行えば、外貨準備が底を突いてしまう
可能性がある。また、米国が日本の円買い介入に協調すれば効果も高まるが、
現在の米国は自国のインフレ抑制に躍起になっており、物価高騰を加速する
「ドル安」誘導政策に協調するとは思えない。