山上容疑者の母親は「脱会する、洗脳が解けるレベルではない」 伯父が明かす銃撃事件後〈AERA〉

 安倍晋三元首相銃撃事件を起こした山上徹也容疑者の伯父が本誌の取材に応じた。事件後の母親と妹の様子、そして伯父の現在の心境とは──。AERA 2022年9月26日号の記事を紹介する。(全3回の3回目)

 09年6月、警視庁公安部が、教団関連の印鑑販売会社の社長ら7人を特定商取引法違反(威迫・困惑)の疑いで逮捕した。霊感商法に捜査が入ったのだ。だが、このことも山上家を救うことにはつながらなかった。

 悪質ながらも契約書と領収書が発行されていた霊感商法は返金交渉がしやすい側面があったが、捜査以降は「宗教活動」という名目で領収書のないお金を集めるようになったからだ。

 先祖を地獄から救済するとして7代ごとに「先祖解怨献金」名目で70万円を四氏族(4家系)分求めたり、430万円献金して、教祖の御言葉集「天聖経」を授かるよう指示したりする──などだ。

 旧統一教会の問題に取り組んできた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」では87年以降、信者やその家族から受けた相談と被害額を集計しているが、近年はどちらも減少傾向にある。同連絡会の代表世話人、山口広弁護士は、こう話す。

「皮肉なことだが、違法な行為であることを証明するハードルが少し高くなった。不当に高額なものを売りつけたのではなく、少額献金を何度も出させる手法で被害と違法性が見えにくくなった」

 銃撃事件直後、伯父は山上容疑者の母親と妹に連絡を取り、奈良からタクシーで大阪府内の自宅に呼び寄せた。弁護士でもある伯父は、

「法曹出身なので、とにかく証人確保をしなければ、と。到着した時、2人とも憔悴(しょうすい)しきっていました」

 と振り返る。警察と検察に連絡を取り、調べに応じ、これまでの母親や教団とのやり取りに関する資料を提出してきた。

 母親は今年70歳になるという。伯父の家にかくまわれていた時、2階の空き部屋にあがり、バイブルを広げて礼拝をしていたという。元信者の女性は、

「事件を機に脱会するのではなく、自分の信仰が足りなかったから事件が起きてしまったという心境でしょう」

 だから、検察の調べに「教団に申し訳ない」と繰り返しているのだろう。伯父は、

「脱会するとか、洗脳が解けるなんていうレベルではないですし、あの年になって、信じているものを奪うのはかわいそうだとも思っています」

 母親は現在、伯父の家を出て教団関係者の用意した場所で生活しているとみられる。教団に心の平穏を求め続ける先に、いったいなにがあるのだろうか。
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