歌手の加藤登紀子さんがカバーしたソ連のヒット曲「百万本のバラ」で知られるロシアの大御所歌手アーラ・プガチョワさん(73)が、ロシアで「反戦」の象徴となっている。

 夫がウクライナ侵攻を非難して「外国エージェント(スパイ)」に認定されると、18日にインスタグラムで「私も加えて」と直訴。投稿に10万件以上のコメントが付いた。

 プーチン政権が目を光らせるのは、コメディー俳優で5人目の夫マクシム・ガルキンさん(46)。2月の侵攻開始時に「戦争反対」と表明し、身の安全のためプガチョワさんと出国した。8月下旬にプガチョワさんが先に帰国したが、国外に残るガルキンさんは今月16日、「スパイ」のリストに載った。

 プガチョワさんは「夫は真の愛国者で、祖国の繁栄や平和な生活、言論の自由を望んでいただけだ」とインスタグラムに投稿。ウクライナ東部ドンバス地方の「解放」という「まやかしの目標」のために若者が命を落としていると政権に抗議した。これに対し、ロシアで賛否両論が巻き起こった。

 独立系メディアによると、プーチン大統領を支持する政界は、痛烈に批判。ミロノフ前上院議長は、19世紀に反乱を起こした将校らを、流刑地まで追い掛けた「デカブリストの妻」を引き合いに「まね事をしている」とこき下ろした。

 文豪トルストイの子孫とされるトルストイ下院副議長は「残念でならないのは、最も人気があった女性歌手が現実の感覚を失い、ロシアの敗北を願う人々と連帯していることだ」とコメント。「(プガチョワさんは)今やソ連時代の博物館にしか居場所はない」と冷たくあしらった。

 軍に不都合な「偽情報」流布に最高15年の禁錮刑が科される言論弾圧の中、反体制派は歓迎。「反戦世論のリーダーになった」(政治学者)、「悪の勢力に百万本のバラで対抗した」(人権活動家)とたたえた。18世紀の農民暴動「プガチョフの乱」をもじった見出しを付けるメディアもある。 
https://news.yahoo.co.jp/articles/0a390f38cde4a033296829c6dbe955beeaa54652