https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220922/k10013830961000.html

なぜ米中対立の最前線に自衛隊が 密着取材で見えたものは?

日本から遠く離れた、南太平洋にあるガダルカナル島。
この夏、1隻の艦艇が入港した。海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」だ。

かつて日本とアメリカが激戦を繰り広げたこの島ではいま、アメリカと中国が安全保障をめぐって激しい駆け引きを行っている。

そこになぜ、護衛艦が向かったのか。「きりさめ」に同乗し、米中対立の最前線で活動する自衛隊の狙いを取材した。
(NHKスペシャル「混迷の世紀」取材班)

“防衛交流”でソロモン諸島・ガダルカナル島に
7月27日、グアム・アメリカ海軍アプラ基地。

厳重なセキュリティーチェックを経て基地に入ると、岸壁の一角に、海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」が横付けされていた。

7月上旬に佐世保基地を出港した「きりさめ」は、燃料や食料などの補給のため、グアムに寄港していた。

課せられた任務は、太平洋島しょ国との“防衛交流”だ。

政府は2016年に『自由で開かれたインド太平洋構想』を打ち出した。

この構想を実現するため、海上自衛隊は翌年からインド太平洋地域の国々に毎年、護衛艦を派遣して、行事や共同訓練などを通じて関係強化を図る“防衛交流”を行っている。

今回「きりさめ」はアメリカ軍とともに初めてソロモン諸島の首都があるガダルカナル島を訪問。

2週間あまりにわたる密着取材が始まった。
変化する“日米同盟の質”
グアムを出港して2日後。
「きりさめ」はアメリカ軍と洋上補給訓練を行った。

姿を現したのは貨物弾薬補給艦「セサール・チャベス」。

まるで灰色のビルが海に浮かんでいるかのような大型の艦艇だった。

訓練で「きりさめ」は補給艦から燃料の補給を受けた。

自衛隊がアメリカ軍に燃料補給する光景はこれまで何度も見てきたが、逆のパターンを見たのは初めてだった。

同盟関係のもと、お互いに支え合う。

当たり前のことかもしれないが、同盟の質が以前より変化していると感じた。

海上自衛隊の幹部に聞くと、今回のように遠方に赴く際にアメリカ軍から補給を受ければ、補給艦を伴わずに済むため効率的だという。