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日産・三菱自動車、軽EV2割増産 国内EV販売の5割に
日産自動車と三菱自動車は共同開発した電気自動車(EV)の生産台数を2023年度に前年度比で約2割増やす。両社が6月に発売した軽EVの好調な販売がけん引し、22年度の国内EV販売台数は前年度比2倍以上に達する見通し。スズキやダイハツ工業なども軽EVの発売を予定する。国内新車の4割を占める軽を軸に日本でEV普及の兆しが見え始めた。
三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)で軽EVを増産する。23年度の生産台数を年約7万台と、22年度計画から約2割増やす。これまでに三菱自の主要部品会社に計画を伝えた。11月にも正式に決める。新たな設備投資はせず、勤務シフトを増やすなどして対応する。三菱自の21年度の国内生産台数は約42万台で、軽EVは約2割に相当することになる。
日産は「サクラ」、三菱自は「eKクロスEV」としてそれぞれ軽EVを販売している。発売からすでに計3万5000台を受注した。22年4〜8月の国内EV販売台数は2万1000台で、そのうち日産と三菱自の軽EVは1万200台と5割を占める。
軽EVの生産は必要な半導体を確保しほぼ正常化し、受注残を順調にこなしている。22年度は約6万台の生産・出荷を見込んでいる。21年度の国内EV販売台数は20年度比68%増の約2万4000台だったが、軽EVがけん引して22年度は2倍以上に急増する見通しだ。
これまでの日本車は日産「リーフ」などを除くとEVの品ぞろえがほとんどなかった。そのうえ価格の高さや充電インフラの未整備など消費者が敬遠する材料が多かった。世界の主要地域で日本はEV普及が特に鈍く、1〜6月の国内新車販売に占めるEV比率は1%にとどまった。中国の19%や欧州主要18カ国の13%、韓国の8%強を下回る。
潮目は変わりつつある。日産と三菱自が共同開発した軽EVは補助金込みで約180万円。最安値圏のEVが実際に出てきたことで国内EV比率は7月は2%、8月は3%近くまで急伸した。政府の補助金も前年度より4倍弱に増やしたが、当初見込みより4カ月早く10月末で枯渇する。
デロイトトーマツグループが6月にまとめた消費者調査によると、今後3年以内に車の購入予定がある人のうち、EVもしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)を購入する割合は25%に達した。希望する理由では、「環境への影響」と「総コストの低さ」がそれぞれ約7割と上位2つの項目となった。
軽は日本の新車市場の4割を占め、小さくて維持費も安く、2台目需要の大きい地方で普及率が高い。EVの弱点とされる航続距離の短さは、近距離走行が中心の地方では影響が小さい。ガソリンスタンドの統廃合で地方で給油所が減少するなか、EVには家庭で充電できる利点もある。
日本では政府が35年までに乗用車の新車販売をすべてEVやハイブリッド車(HV)などの電動車とする目標を掲げる。21年度の軽自動車の国内販売台数は155万台で、新車販売の4割を占める。スズキやダイハツ、ホンダなども23年から相次いで軽EVを発売する計画で、魅力ある商品が拡充されれば、軽EVを軸に日本のEV普及が進む可能性がある。