アメコミに登場する「モサドのスパイ」
アメリカの大人気映画「キャプテン・アメリカ」シリーズの第4作目『Captain America: New World Order(キャプテン・アメリカ:ニュー・ワールド・オーダー)』が2024年に公開される。世界でも大人気作品だけあって、上映が待ち遠しいファンも多いだろう。
9月10日に最新作の詳細が発表されたのだが、これに登場するキャラクターが物議をかもしている。
米テレビ「CNN」によれば、「ディズニーのマーベルは、2024年公開の最新作で、『サブラ』というキャラクターを登場させる予定がある」という。これまでマーベルの漫画に何度も登場しているこのサブラというキャラクターは、「イスラエル人のスーパーヒロイン」であり、イスラエルの情報機関であるモサド(イスラエル諜報特務庁)のスパイという設定だ。
サブラは、イスラエルの「スーパーソルジャー」プログラムでミュータントとして誕生したことになっている。そしてアメリカの愛国者という設定であるキャプテン・アメリカのように、イスラエルの愛国者として描写されている。コスチュームは、青と白のボディースーツで、胸にはユダヤ教の象徴である「ダビデの星」が描かれている。
しかしこのキャラクターの登場を快く思わない人たちがいる。「CNN」は「サブラのキャラクターが復活することによって、映画におけるアラブ人や、パレスチナ人への酷い扱いについて、攻撃的なステレオタイプを拡散させる可能性があるとして騒動になっている」と報じている。
米誌「バラエティ」によれば、「サブラは1981年に『超人ハルク』の漫画で初めて登場している。その存在は議論を生み、マーベル漫画をイスラエルとパレスチナの紛争に引きずり込むことになった」という。サブラのパレスチナ人少年への接し方に関する描写が問題になったことが、過去にあった。そして今回の発表もアラブ側の怒りを買っているのである。
「CNN」は、その1981年の漫画でのサブラの初登場エピソードをこう紹介している。
「巨大な緑色の超人ハルクは涙を流し、イスラエル人のスーパーヒーローで、スパイ組織『モサド』のエージェントであるサブラに向かって叫んでいる。アラブの『テロリストら』の仕掛けた爆弾によって死亡した若いパレスチナ人の少年の亡骸が、足元に横たわっていた」
「そこでハルクがこう語る。『少年の同胞や、君の同胞のどちらも土地を求めるために、少年は死んだのだ! あなたたちが共有しようとしないから、少年は死んだのだ!』」
「ダビデの星が胸に描かれた青と白のコスチュームに身を包んだサブラは、少年の隣でひざまずいた」
そしてこんな説明が続く。
「サブラは、ハルクにこの少年を人間として見るようにうながされたのである。彼女が人間らしさに目覚めるには、モンスターが必要だったということだ」
子供向けの漫画にしてはかなり深い描写だと言えよう。こうした政治的な側面もあり、今回、ディズニーがサブラというキャラクターを登場させることには賛否が渦巻いている。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/a096d8261dcf4a6f95a5eabb2b9ac58634871329