キリトさんはあの《SAO事件》から生還されたとのことで、事件当時のことを聞かせてください。
今でも覚えています。《SAO》はタイトルが発表されたときから期待していて、βテスト(製品発売前のユーザー参加型テスト)にも参加していました。
製品版が出たときも、サービス開始日からゲームにログインしていたんです。僕以外にも、同じように《SAO》を楽しみにしていたプレイヤーがたくさんゲーム内にいて、それがまさかあんなことになるなんて……思いもしませんでした。
楽しいはずの冒険が一転、命を賭けたゲームになったわけですね。
はい。ゲームによくあるちょっとした冒険でも、そのとき《SAO》の中にいた僕たちにとってはその全部が「命がけの戦い」だったんです。
それから2年後にようやく《SAO》をクリアされたとのことですが、ゲームに閉じ込められてからクリアにいたるまでの経緯を改めて聞かせてください。
最初、《SAO》に閉じ込められたときはみんな訳が分からず、現実からの助けを待とうとする人や何かの演出だと思って普通に遊ぼうとする人、それでもいち早く次の階層を目指そうとする人など、いろんな人がいました。
プレイヤーのなかには、VRゲームの経験がない子供や、大人でもRPG慣れしていない人もいて、いつしか、モンスターや他のプレイヤーとの戦闘がない安全なエリア(圏内)で生活する人と、ゲームのクリアを目指す人たち(攻略組)で分かれていました。攻略組の中でも様々な考え方があり、賛同するもの同士が集まって攻略ギルドが発足するなど、早い段階からこの世界での社会システムが構築されていったように思います。
僕は基本的にはソロでの攻略を進めていました。今にして思うと、自分のせいで誰かが犠牲になってしまうかもしれないことの恐怖から逃げていたんだと思います。気持ちが折れてしまいそうなこともありましたが、僕の場合は様々な出会いに支えられて……その出会いを犠牲にしないように、とにかく自分にできることを精一杯やっただけだと思っています。
当時の記録では、100層ある《浮遊城アインクラッド》の75層時点で《SAO》がクリアされたとなっています。生還したプレイヤーの間では、キリトさんを「英雄」と呼ぶ声があったようですね。
英雄だなんて、そんな褒められるような人間じゃありませんよ。仲間がいなければ、あの世界を生き抜くことさえ出来なかったと思います。https://news.livedoor.com/lite/article_detail/22915913/?_clicked=news_sp_top