――まずは高口さんにお聞きします。JENESIS社ってどんな企業なんですか?

高口 日本のIT企業や流通などから、スマホやタブレット端末、各種家電製品の発注を受け、それらを開発・製造するEMS(電子機器委託製造)の国内大手です。

ハードウエア製造の世界的中心地である深圳を拠点とすることで、多岐にわたる製品を安価に開発・製造が可能。これまで翻訳機のポケトーク、飲食店の注文用タブレット、教育用タブレットなど、500機種以上の製品を手がけてきました。

その縁の下の力持ち的な企業が、aiwaブランドの使用権を取得したことが業界的に注目されています。そもそも自社ブランドを持たなくてもビジネスは成功していますから。藤岡さんは、どうしてaiwaを?

藤岡 私は過去に日本のカメラメーカーであるヤシカ社や、アメリカのポラロイド社といったブランドの使用権を取得して販売を行なっていました。そのとき実感したのは、営業や製品に対する信用面での、日本メーカーの大きなブランド力です。

なかでもaiwaは老舗のオーディオメーカーとしての知名度もあり、価格的な親しみやすさもあります。何より私自身「お年玉をためて買った初めてのオーディオがaiwa」という人間ですから、そういった部分でも思い入れが強い。それもあってaiwa製品の製造販売を開始しました。

高口 藤岡さんは、中国の深圳を拠点としていますが、現地でのaiwaの評判は?

藤岡 40代以上の人間だとみんなaiwaを知っていますね。大手より安いけど、実は内部パーツは大手と同じ物を使い高品質でコスパが高い。今の中国メーカーが当たり前にやっていることの先駆けだったメーカー、という認識です。埋もれさせるには、もったいないブランドですよ。

高口 現在、中国メーカーはサンヨーや東芝など、多くの日本のブランドを取得してますが、これはどのような理由が考えられますか?

藤岡 ブランドをイチから立ち上げ、テレビでCMを流したりイベントを開催して、それを育てるまで10年はかかります。

しかし、日本ブランドを取得すれば、それらをすべてショートカットできる。これが中国メーカーの発想です。うちは開発・製造能力がありますので、その中国式をaiwaに取り入れて、ブランド力を育てる時間を買った感じですね。

あと、デジタル分野において日本での製品販売を許諾してくれたことも大きい。aiwa以外にも、誰もが知る家電やカメラの日本ブランドも検討しましたが、〝日本では製品販売できない〟という条件があり、それが障壁となりました。

https://wpb.shueisha.co.jp/news/economy/2022/10/01/117401/