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コロナ禍などで乗客減の野岩鉄道、コロナ後見据えた「切り札」は……


栃木県日光市と福島県南会津町を結ぶ野岩(やがん)鉄道(本社・日光市)が、クラウドファンディング(CF)を活用して電車を観光列車に改修するプロジェクトを進めている。コロナ禍の影響を受け、乗車人員は2021年度、最盛期の2割弱にまで減った。開業以来使っている車両に模擬運転台や畳のスペースを設け、観光客を呼び寄せる計画だ。
 新藤原―会津高原尾瀬口駅間(30・7キロ、9駅)の単線区間を37分(特急、快速は34分)で結ぶ野岩鉄道は、1986年10月に開業した第三セクター。1891(明治24)年の建設運動開始後、95年かけて開通した地元悲願の鉄道で、下野国(栃木県)と岩代国(福島県)の「野」と「岩」の1字ずつをとって名付けられた。トンネル(18カ所)と橋(62カ所)で全線の約66%を占めている。

 これまでの乗車人員のピークは1991年度の約117万人。車での観光が増えたことや少子高齢化の影響を受け、2019年度は約32万人と約3分の1に。さらにコロナ禍の影響で21年度は約18万人にまで減った。

 路線利用者の約98%を観光客が占める。コロナの収束後を見据えて同社が打ち出したのが、既存車両の観光列車化だ。開業以来使用している「6050型」を改修する。22年3月のダイヤ改定で走る路線が減って希少価値が上がり、鉄道ファンの間で人気が高い車両だ。
6050型には、折りたたみテーブルやボックスシートがあり、もともと観光に対応しているが、改修でさらに乗って楽しい車両にする。運転士の気分が味わえる2台の模擬運転台には本物の部品を使う。足を伸ばしてくつろげる畳のスペースや自転車置き場に加え、スーツケースなどが置ける多機能スペースもつくる。

 改修費用は当初、1500万円を見込んでいた。コロナ禍などで経営状況が厳しいことからクラウドファンディングを活用。8月10日~10月7日の期間で募集したところ、9月13日に目標額に達したという。

 そこで同社は目標額を2300万円に引き上げ、実際に運転台から撮影した映像を流す模擬運転台のモニター画面(32インチ程度)の設置や、開業以来使っている和式トイレの改修も打ち出した。募集期間は延長せず、10月7日まで。

 同社の沿線には龍王峡や湯西川温泉、川治温泉といった観光地が多い。折原正則・常務取締役鉄道部長は「第1目標を達成できて感謝している。第2目標も含め、ハイキングや温泉を訪れるお客さんがくつろげて、癒やしの場となる列車にしていきたい」と話している。第1目標分は今年度中に改修する予定だ。