中国で日本語熱が急速に高まる意外な理由
https://news.yahoo.co.jp/articles/d928e2c8858737b3e5a68c9b08806391c1304828
 ◇急増する日本語での受験者

 まずは現在の中国の日本語旋風について紹介したい。実は日本語に猛烈な追い風が吹いているのは、大学入試の現場だ。日本語は、70年代から中国の「高考」と呼ばれる大学統一入試で選択できる外国語科目の一つになっている。ただ、当然ながら英語が中心で、日本語を選択する人はほとんどいなかった。異変が起きたのは2020年前後からだ。

 中国内の報道によると、高考での日本語選択者は16年に1万人弱、17年に約1万6000人、18年には約2万3000人と徐々に増加した。19年にはこれが約4万8000人、20年には10万人を超え、21年には20万人を突破した。今年6月の高考でも25万人以上(50万人との報道もある)が受験したと報じられている。なぜ急に25倍にも増えたのか。背景となっているのは過熱する受験競争だ。

 内陸部・湖南省出身の劉さん(23)は、17年の高考の外国語科目を日本語で受験した。日本語受験が可能だと知ったのは高校2年生の時だった。英語が不得意だったわけではないが、友達に誘われて中学生時代に基礎的な日本語を学んだ経験があったこと、高校の英語教師が苦手だったことから、日本語で受験してみようと思い立ったという。

 「受けてみたら非常に易しく感じた。英語の試験は読解問題が難解だが、日本語はかなり平易な文章を使っていた」。150点満点の試験結果は、ほぼ満点だった。

 こうした体験談がインターネットなどを通じて拡散したのかもしれない。その後の数年間に、進学実績を高めるために学校ぐるみで日本語受験を勧める高校も増えた。大学院で日本語を専攻する劉さんのところにも、日本語学習に関するアドバイスを求める高校生からの相談が後を絶たない。多くが英語に苦手意識がある生徒だという。劉さんは「日本語は漢字を使うため、英文読解が苦手な学生にとっては取り組みやすいと感じるようだ」と語る。

 「日本語受験は英語よりも20~50点得点アップしやすい」と解説する教育専門誌もあり、受験テクニックとして、日本語学習熱が高まったというのは間違いなさそうだ。同じ漢字文化圏に属する言語の中で、韓国語などとは違って漢字を多用していることが、日本語熱につながった。