最初期のアンパンマンは、肥満体型の「あんパンを配るおじさん」だった。「カッコワルイ!」と子どもに罵倒されるシーンも

10/3(月) 13:42配信

■時代は1960年代。ラジオドラマの次に大人向けの短編童話として生まれる

前述のインタビューの中で、やなせさんはこの最初期のアンパンマンについて「自分の顔を食べさせるのでなく、あんパンを配るおじさんだったんです」と振り返っています。そのお話は以下のような内容でした。

■「カッコワルイ!」と子どもに罵倒される「おじさんアンパンマン」の悲哀

「アンパンマン。あんまり聞いたことのないなまえですが、たしかにある日、アンパンマンは空をとんでいました」と物語は始まります。

その容貌について「マンガのスーパーマンや、バットマンによく似ていました。でも、まるでちがうところはスーパーマンみたいにかっこよくなかったのです」と断言します。

「全身こげ茶色で、それにひどくふとっていました。顔はまるくて、目はちいさく、はなはだんごばなで、ふくれたほっぺたはピカピカ光っていました」

なんだか重そうにヨタヨタ飛んでいたというアンパンマン。挿絵にも全身タイツのような姿でマントを着た男性が住宅地の上空を飛ぶ姿が描かれています。

疲れ切ったアンパンマンが、ある町の屋根で体を休ませていると、一人の少年が近づいてきます。

「私はアンパンマンだ」と名乗るも、少年はその名前を知りません。テレビやマンガに出てるのかと少年が聞かれるも、アンパンマンは否定します。「それよりきみにアンパンをあげようか」と、膨らんだ腹からあんパンを取り出しました。しかし、少年は「いらないよ」と拒否。「アンパンより、ソフト・クリームのほうがいい」と言われる始末です。ヨタヨタと飛び去る姿を見た少年からは「カッコワルイ!あんなのダメだなあ」と罵倒されました。

その後、場所は「戦争が続いて、野も山もすっかりやけただれた国」に変わります。砂漠のような土地で数人の子どもたちが飢えて死にそうになっていると、空からアンパンマンがやって来て、焼きたてのアンパンを落として、言いました。

「しっかりするんだ。死んじゃいけない。私は何度でもアンパンをはこんでくるぞ」

そのとき「ドヒューン」と音がして、アンパンマンの胸のあたりに白い煙が上がります。飛行機と間違えられて大砲で撃たれたのです。アンパンマンがどうなったのかは分からないけど、「決しては死にはしないでしょう」と書かれています。

「世界じゅうのおなかのすいた子どもたちのために、アンパンマンは今も飛びつづけているはずです」

悲しいながらも、希望を持たせる言葉で物語は幕を閉じます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e23bc3e32f600dae419502d0993da7eee9b10c3f