東京で100年近い歴史を持つ焼き鳥の名店「江戸政」が2022年9月、閉店しました。
きっかけの一つが、「生つくね」など生の鶏肉料理の提供を問題視したSNS上での論争でした。
食品衛生法上、鶏肉の生食に規制はありませんが、細菌性食中毒の中でも近年発生件数の多いカンピロバクター食中毒の原因の一つであり、厚生労働省は加熱調理を呼びかけています。

正肉だけを丸めてつくる「生たたき」を提供してきた江戸政3代目店主の浜名久利さん(49)は、メニューをまねしようとした他店が「生つくね」を出すきっかけを与えてしまった責任を感じ「今後、鶏肉を生で食べないようお願いします」と伝えています。

1924年に屋台から始まった江戸政を浜名さんが継ぐきっかけは、義父である先代の死去でした。それまで「継ぐことは考えていなかった」どころか、焼鳥屋をやっていることぐらいしか知らなかったといいます。

義父の死に際し、義母に挨拶するときに自然と出た言葉が「継がせてください」でした。継ぐことが義父に対する親孝行だと、義父が眠る前で義母へ承継する意思を伝えました。

2006年11月、女将である義母と、未経験の浜名さんとの二人三脚で、新生・江戸政が始まりました。皿洗いから始まると思っていたところ、「あなたは3代目でしょ?お父さんと同じとこに立つんだから胸張って。3代目として胸張らなきゃダメだよ」と言われ、浜名さんは初日から焼き台に立ちました。

当時の江戸政は、先代の他界を知らない人を含め、常連客で埋まるお店でした。女将が仕込み、浜名さんが焼いていました。

しかし、女将にもタレの作り方など伝承されていないことが多く、レシピもほぼ残っていませんでした。また、浜名さんの焼きの技術が先代には遠く及ばなかったため、みるみるうちにお客さんが減ったといいます。


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