「恐怖指数」5倍上昇見込む取引、米雇用統計前日にトレーダーが実施

7日に発表される米雇用統計を巡る不透明感から、「恐怖指数」と呼ばれるCBOEのボラティリティー指数(VIX)は6日、30を上回って終了した。そのような水準では止まらないとの予想に基づく取引を行ったトレーダーがいる。

  取引終了の直前、VIXが来年3月後半までに150に達すると予想する取引をトレーダーが実施。複数の市場関係者の話によれば、取引を行ったのは1人とみられ、一連の大口売買を通じてコールオプション5万枚を計95万ドル(約1億3800万円)で購入した。この日の取引で最も活発に取引されたVIXオプションの限月だった。

  「再び大きな相場下落があった場合、割安な方法のヘッジとなるかもしれない」とウォーラックベス・キャピタルのトレーディング担当ディレクター、マイケル・ベス氏は指摘。「このオプション契約のデルタは現時点で低いが、事態が迅速に動けば、その価値は大幅に増す可能性がある」と述べた。

  利益を確保できる水準からこれほど離れたオプション契約でこれだけ多くの活動が見られるのは珍しい。市場環境が不透明な際、トレーダーは「イン・ザ・マネー」からあまり離れていない、期間が短めのオプションを中心に取引する傾向がある。1990年までさかのぼるブルームバーグのデータによれば、VIXの日中ベースの過去最高は2008年10月24日に記録した89.53だ。

  このVIXオプションが期日を迎える来年3月22日までは、4回の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合や6回の米インフレ統計発表など、相場を動かし得るイベントが控えている。

  サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者クリス・マーフィー氏は、可能性は小さいが発生した場合に大きな影響を及ぼすテールリスクを回避する手段とみられる「このテールヘッジは実際にVIXが150近くに達することを必要としない」と指摘。「ただ、VIXとVVIX(VIXのボラティリティーを測る指数)の両方が急上昇した場合、こうしたコールの価値は5-10倍に膨らむ可能性がある」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-07/RJCU3DDWLU6801