食品の値上げが10月に入って相次ぐ中、「物価の優等生」と呼ばれるモヤシの小売価格は、ほぼ据え置かれたままだ。
群馬県内のスーパーマーケットでは1袋(200グラム)が税込み20円前後で販売されている。
消費者にはうれしい安値だが、原材料費など生産コストが上がり続け、業者からは「すでに限界」と悲鳴が上がる。

富士食品工業(本社・板倉町)は県内で唯一、生産者団体「工業組合もやし生産者協会」(東京都)に加盟する業者だ。
同社は栃木県日光市の日光工場で1日に150トンほどを生産している。担当者は「原材料、燃料費などすべてが高騰し、
生産環境は厳しさを増している」と語る。

同社の主力製品「緑豆もやし」の原料の緑豆は、中国産だ。だが、中国ではより多くの収入を見込める
トウモロコシなどへの転作が進められており、2021年の緑豆価格は00年の約3倍に高騰した。

世界的な原油高も追い打ちをかけ、モヤシの成長の温度管理に使う重油やパッケージの包装資材が値上がりした。
ほかにも、緑豆を船便で輸入するための輸送コストも上昇したという。

さらに今後は、急速に進んだ為替市場での円安・ドル高も、緑豆の仕入れコストに影響する見通し。
同社担当者は「緑豆の仕入れは、米ドルで決済する。3月までは1ドル=115〜120円前後だった為替レートが、
1ドル=140円を突破し、それだけでもかなりのコスト増」と説明する。

モヤシは仕入れ価格が1〜2円程度値上げされても小売価格には転嫁されないのが現状だ。
県内で16店舗を展開するスーパー「ヤオコー」(本社・埼玉県)は「天候の影響を受けることなく、
安定的に生産できるため価格を抑えて販売できる」(広報担当者)と、モヤシの商品特性を理由に挙げる。

協会は2月、「消えゆくもやし屋」とのタイトルで生産者の窮状を訴える文書を、流通関係団体など約800カ所に送付した。
「経費削減への努力は限界を超え、健全な経営はできていません」といった言葉が並び、小売価格の値上げに理解を求めた。

協会の林正二理事長は「スーパーなど小売店にとって安いのが当たり前のモヤシの価格は、競合店との差が見えやすい。
特に食品の一斉値上げで、よりその傾向は強まる。生産者としては、
せめて小売価格を3〜4円は値上げしてほしいのだが」と切実な思いを吐露する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c54b0499cf928ae29b73a3aff4ae2f414bd04a9