韓国政府も手をこまぬいていたわけではない。少子高齢化に対応するため中長期の政策目標を盛り込んだ基本計画を2006年から5年ごとに立てている。

計画にもとづいて2006年から2020年まで380兆ウォン(約38兆円)にものぼる予算を投入し、3千にも及ぶ政策メニューを実行に移した。

ところが出生率を押し上げる効果はなかった。合計特殊出生率は2010年まで1.2を維持していたが、2016年から急激に低くなり、2018年には初めて1を割った。その後ずっと1を下回っている。

日本も少子化が社会問題として取り上げられるようになってかなりたつと思うが、少なくとも私がいま住んでいる福岡では、どこに行っても小さな子どもを持つ家族をよく目にする。

街では片方の手で幼い子と手をつなぎ、もう一つの手で下の子を乗せたベビーカーを押している「妊婦」にも何度も出くわした。つまり3人の子を持つ、というわけだ。

そんな様子を見るにつけ、韓国の地下鉄で通勤していたころ、座席に設けられていた妊婦や幼い子を持つ親のための専用シートに誰も座っていなかったことを思い出し、なんだかほろ苦い気持ちにもなった。