安倍元首相銃撃事件から3カ月 風化懸念「見える形で残して」

安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され死亡した事件から3カ月となった8日、銃撃現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅北口前では、手を合わせる人たちの姿がみられた。現場を巡っては奈良市の仲川げん市長が慰霊碑などを置かずに、当初の再開発計画通り車道として整備する方針を決定。ただ、訪れた人からは事件の風化を懸念する声が聞かれた。

■全国から訪問

数珠を持参して安倍氏の冥福を祈っていた奈良市の福山和明さん(72)は「『ご苦労様でした。安らかにお眠りください』という気持ちで手を合わせた」と話し、「現場に何もなくなるのは残念。何らかの形で事件について残してほしいし、命日には献花台を置くなどしてほしい」と訴えた。

東京都目黒区から訪れた自営業の鈴木良直さん(47)も「初めて現場に来た。安倍さんは安全保障や拉致問題に取り組み、日本人のために頑張ったと思う」とした上で、「事件を風化させないためにも、現場には慰霊碑などを建ててほしい」。

千葉県船橋市から訪れた会社員の二ノ宮力也さん(49)は「国葬には行けなかったので、3連休を利用して現場に来た。安倍さんは日米同盟を強固にするなど外交面で大きな功績を残した方。まだまだ活躍してほしかった。現場には何らかの『形』を残してほしい」と話した。

■車道整備続行

奈良市は事件前から現場周辺の整備事業を進めていたが、事件を受け、仲川市長は追悼の場を設置することを検討。有識者や地域住民らに案を提示したところ、交通安全上の理由などから慰霊碑設置に否定的な意見が多数を占めた。

このため、仲川市長は今月4日、「構造物で弔意を示すことはしないと判断した」と説明。周辺に花壇を整備する方針を示した。
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