「妊娠理由に退職強制」 元技能実習生が監理団体などを提訴へ
2022/10/12 00:00
妊娠を理由に帰国を迫られるなどし、不当に退職させられたとして、福岡県の高齢者福祉施設で技能実習生として働いていたフィリピン人の女性(26)が、受け入れを仲介した大分市の監理団体と施設を運営する福岡県の社会福祉法人などを相手取り、慰謝料など計約620万円の損害賠償を求める訴えを福岡地裁行橋支部に起こす。原告の代理人弁護士が11日付で訴状を発送した。
代理人弁護士によると同様の事例は、中国人の元技能実習生が妊娠を理由に強制帰国や解雇を迫られたなどとして、実習先の富山市の会社と東京都の受け入れ団体に解雇無効と賠償を命じた2013年の富山地裁判決があるが、全国的には珍しいという。出入国在留管理庁は妊娠による技能実習生の解雇を違法と説明しており、監理団体や法人側の対応をどう判断するかが争点となりそうだ。
訴状などによると、女性は19年9月、介護職の実習生として来日。翌月から、福岡県の特別養護老人ホームで入所者の着替えや入浴、食事などを介助する仕事をしていた。
21年4月に妊娠が判明したことから、女性は監理団体に同5月、「産休を取得してフィリピンで出産後、実習に復帰したい」との意向を伝えた。ところが、監理団体の理事らから帰国同意書への署名を強いられたり、法人からは勤務を外されたりしたため、女性は同8月末でやむを得ず退職した。
監理団体の理事らは女性に「契約違反で罰金を払い、フィリピンに戻らなければならない」などと説明したほか、女性のパートナーで別の職場で働いていたフィリピン人実習生の男性にも「もし私があなたの立場だったら、彼女に中絶をするよう頼むだろう」などと暗に中絶を勧めていたという。
実習生には日本の労働関係法令が適用され、男女雇用機会均等法では妊娠や出産などを理由とする解雇や不利益な取り扱いは禁じられている。原告代理人の石黒大貴弁護士は「日本人と同様に認められている権利にもかかわらず、実習生との雇用関係を一方的に終了させることは許されない。妊娠した実習生が置かれている厳しい現状を明らかにしたい」と話す。
※略※
https://mainichi.jp/articles/20221011/k00/00m/040/187000c