岡山市で西田真愛(まお)ちゃん(死亡当時6歳)が虐待を繰り返し受けた後に死亡した事件をめぐる検証報告書は、市が虐待のリスク評価を見直すタイミングが少なくとも6回あったと指摘した。中でも2020年に真愛ちゃんが裸で墓地に立たされた事案を把握しながら、適切な対応をとれなかったことを問題視した。
「真愛ちゃんが墓場で立たされて、その時に対応をもう少し変えていれば違った結果になったかもしれない。心残りであるのは間違いない」
大森雅夫市長は11日、外部有識者でつくる市の分科会から報告書を受け取ると、こう語った。市側の対応の不備を認めたかたちだ。
分科会が「六つの機会」でもっとも検証を重ねたのは、真愛ちゃんが2020年9月、目隠しの状態で全裸で墓地に立たせられた事案だった。母親の彩被告(34)ばかりでなく、交際相手の内装工の船橋誠二被告(39)=ともに逮捕監禁致死と強要の罪で起訴=について「存在が警察によって明らかにされた」と認定した。
報告書によると、県警は「男(船橋被告)からの報復がある可能性があり命が心配」「もともと虐待家庭であり、(真愛ちゃんのきょうだい)全員を保護してほしい」と市の児童相談所(児相)に伝えた。
しかし児相は危険性を十分に認識せず、真愛ちゃんのみの一時保護にとどめた。両被告が反省の態度を示したことから、2週間後に真愛ちゃんの保護を解除。彩被告を「軽度の育児放棄」と判定してきたが、この件を経ても虐待のリスク評価を引き上げなかった。
両被告は21年9月、真愛ちゃんを鍋の中に長時間立たせたり、指を口に押し込み嘔吐(おうと)するよう要求したりといった虐待を繰り返した末、同月25日に布団に巻いて放置。真愛ちゃんを低酸素脳症にさせ、約4カ月後に死亡させたとされる。
墓地の事案をめぐり、報告書は、家庭の状況を「正確に評価し直す絶好の機会だった」と指摘。リスク評価を変えなかった対応は「不十分だった」と結論づけた。
分科会の中原隆志副会長(弁護士)は11日の記者会見で「市が念を入れた調査をしていれば死亡という結果は防げたかもしれない」と指摘した。
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