
https://news.yahoo.co.jp/articles/585c1642d39ed70e9a29a386e4a85ab9402df16b
新たなテロの波とは…大国間競争の時代に回帰する世界情勢の潮流から考える
国際政治が再び大国間競争の時代に回帰していることに異論を唱える人は、今日においては殆どいない。米中対立の激化、そしてロシアによるウクライナ侵攻はその動きにいっそう拍車を掛けている。
バイデン政権は10月12日、政権の外交・安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」を発表し、中国を改めて唯一の競争相手と位置づけ、同国との戦略的競争を最優先課題にする方針を確認した。
また、ロシアを今日の国際社会の平和と安全に対する差し迫った脅威と非難し、大国間の紛争リスクが上がっていると懸念を示した。
今日においてはロシアが緊急の課題となっているが、バイデン政権は中長期的ビジョンを見据え、今回国家安全保障戦略を発表したと考えられる。
一方、今回の全48ページからなる国家安全保障戦略において、テロリズムに関する記述はP30ページ半分下からP31ページにかけてのみで、これはアフガニスタンから米軍を撤退させ、大国間競争へ舵を切るバイデン政権の方針を反映するものである。
幸いなことに、9.11同時多発テロから21年となる中、同テロを実行したアルカイダ、2014年あたりにイラク・シリアで一定の領土を支配して世界を震撼させた「イスラム国」は既に多くの幹部が殺害、逮捕され、組織としては弱体化しており、今日、米国にとって差し迫ったイスラム過激派の脅威はない。
今後も米国は対中国という大国間競争を最優先し、その中で遠隔地から無人航空機などで攻撃する能力「オーバー・ザ・ホライズン(OTH)」という持続可能なテロ対策でイスラム過激派に対応していくことになろう。
宗教型テロと新たなテロの波
しかし、少なくとも21世紀以降のテロ情勢は、世界情勢の潮流にリズムを合わせるかのように変化し、いくつかの波が生じてきた。
1つはイスラム過激派という宗教型テロの大きな波だ。
米国とアルカイダの緊張は9.11同時多発テロ以前の1990年代以降高まってきたが、9.11テロやアフガニスタン戦争、イラク戦争など国際政治がいわゆるテロ戦争の時代に突入すると、アルカイダだけでなく、アルカイダを支持するイスラム過激派、アルカイダの名前を冠するイスラム過激派、「イスラム国」、「イスラム国」の名前を冠するイスラム過激派、そして両組織が掲げる過激思想に共鳴する・刺激を受ける個々人などがそれぞれ台頭し、欧米を中心に国際社会は宗教型テロへの対処を余儀なくされた。
そして、国際社会が宗教型テロに対応する中、テロ情勢では新たなテロの波が顕著に現れるようになった。
米国が長年のテロ戦争で疲弊し、欧州ではシリア内戦などで大量の移民・難民が流入する中、欧米諸国内では反移民・難民、反リベラルなどを掲げる右派政党の台頭が顕著になり、そういった保守的な民意というものが高まりを見せるようになった。
そういった流れに合わせるかのように台頭したテロの波が、白人至上主義的などを掲げる極右型テロだ。
欧米にはそういった保守的な思想や主義主張は以前からあるが、近年、米国のアトムワッフェン・ディヴィジョン(Atomwaffen Division,AD)、ライズ・アバヴ・ムーブメント(Rise Above Movement, RAM)、ザ・ベース(The Base)、英国のナショナル・アクション(National Action,NA)、ロシアのロシアン・インペリアル・ムーブメント(Russian Imperial Movement,RIM)、北欧のノルディック・レジスタンス・ムーブメント(Nordic Resistance Movement,NRM)など白人至上主義的なグループの台頭が顕著になった。
そして、これらグループ以上に暴力的な白人至上主義を掲げる過激主義者によるテロ事件が欧米各国で繰り返し発生した。
2019年3月のニュージーランド・クライストチャーチにあるイスラム教モスクで発生した無差別銃乱射テロ事件、2019年4月のカリフォルニア州・パウウェイシナゴーク襲撃事件、2019年8月テキサス州・エルパソショッピングモール無差別銃乱射事件、2019年8月ノルウェー・バールムモスク襲撃事件、2019年10月ドイツ・ハレシナゴーグ襲撃事件、そして今年では5月、米ニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで発生したライフル銃乱射事件などはそれを物語る。
これらテロ事件の実行犯は白人の若い男で、イスラム教徒やユダヤ教徒、ヒスパニックや黒人などを意図的に標的とし、白人優位の欧米社会を取り戻そうという思想を共鳴していた