『電撃G’sマガジン』伝説連載『シスタープリンセス』の衝撃と魅力 漫画家・ユキヲが語る天広直人への葛藤からの脱却

10/17(月) 8:10配信リアルサウンド

■伝説の雑誌の伝説の読者参加企画

 雑誌『電撃G’sマガジン』をご存じだろうか。あの『ラブライブ!』シリーズもこの雑誌から始まったのだが、2000年に読者参加企画として始まった伝説的な連載が『シスタープリンセス』(以下、シスプリ)である。

 シスプリは『ラブライブ!』シリーズにも関わる公野櫻子が原作を、そしてキャラクターデザインとイラストを天広直人が手掛けた。兄(読者)のもとに突然9人の妹が登場するというぶっ飛んだ内容(しかものちに3人が追加され、12人になる)と、天広が描くかわいらしい妹たちが、全国の“お兄ちゃん”たちをメロメロにした。その反響の大きさゆえ、一時期は電撃G’sマガジンの表紙が毎号シスプリになり、ゲーム化のほか、アニメ化もされるなどメディアミックスが展開された。

 二次創作も盛んになり、コミックマーケットではサークルの申し込みが殺到。妹ごとにサークルが分類されるほどだった。シスプリをきっかけに同人活動を始めたり、イラストを描き始めたというプロも少なくない。漫画『邪神ちゃんドロップキック』などの作品で知られる漫画家のユキヲも、シスプリに影響を受けた1人である。天広を敬愛するというユキヲが、その出合いを語ってくれた。

「本屋で『シスプリ』の絵を初めて見たとき、すっごいかわいい絵があるなと思った。なんと言っていいのかわからないけれど、とにかく、この絵はかわいいなと見入ってしまいました」

 無類のゲーム好きのユキヲは、それまでも格闘ゲームの女性キャラクターのかわいさに引き込まれることは何度かあった。しかし、シスプリは今までの作品とは何かが違っていたという。いったい何がそこまで、衝撃的だったのか。

「シスプリについては、様々な方がその魅力やヒットの要因を語っておられます。12人の妹を登場させるという企画の勝利だと言う人もいますが、僕は天広さんの絵の魅力がヒットに繋がったと考えています。なぜ、こんなにかわいいのか。当時、ものすごく研究したのを覚えていますよ。僕が考える魅力のひとつが“目”だと思います。妹たちの目がとにかくかわいいんですよ。そして、天広さんがデザインするファッションのセンスも凄くて、何を描いてもまったくダサく感じなかった。あらゆる面で、今までの電撃G’sマガジンのコンテンツとは違っていました」

 ユキヲが指摘するように、天広が描き出す妹たちの絵には洗練された美しさがあった。そして、それぞれに明確な個性があった。ユキヲが好きな妹(当時のファンは、今でいう推しキャラを“マイシスター”、通称“マイシス”と呼んでいた)は、雛子、花穂、亞里亞の3人だ。亞里亞はロリイタ服をまとい、フランス人形のような雰囲気を醸し出している。ユキヲは自身の漫画『武蔵野線の姉妹』『邪神ちゃんドロップキック』などに、ロリイタ服を着たキャラをたびたび登場させているが、そのルーツは、シスプリにあるように思う。

「僕が本格的にイラストや漫画を描き始めたのは、間違いなくシスプリの影響です。シスプリがきっかけで、電撃G’sマガジンに初めてイラストを投稿しました。シスプリの同人誌を制作し、コミックマーケットにもサークル参加するようになりました」

 余談だが、筆者は友人が持ってきた電撃G’sマガジンでユキヲが投稿した花穂のイラストが目に留まり、「上手い絵を描く人だなあ」と感じたことを鮮明に覚えている。その相手に今こうしてインタビューをしているのは、運命的な感じもする。シスプリをきっかけに同人活動を始めた人は多く、投稿者同士の交流も活発に行われていた。様々な出会いの場を生み出すきっかけを生んだ点も、特筆されるべきことだろう。

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