小学校銃撃を“でっち上げ”と否定した司会者への巨額の損害賠償請求は、偽情報を発信する誰もが学ぶべき教訓になる
米国の小学校で起きた銃乱射事件について、銃規制の強化を狙う政府による“でっち上げ”と主張していた司会者に対し、日本円で1,500億円近い損害賠償の支払いを命じる判決が下された。この「言論の自由」に対する代償は、偽情報を発信する誰もが学ぶべき教訓になる。
こうした“一撃”が来ることは、誰もが予想していたことだろう。世界が予想していなかったのは、アレックス・ジョーンズがこれほどの額を支払わなければならなくなる、ということだった。ジョーンズが偽情報を流し、サンディフック小学校で起きた銃乱射事件で亡くなった愛する人たちを悼む家族に、さらなる不幸を押し付けた代償である。
ジョーンズがサンディフック小学校で殺された子どもたちの親を中傷した責任を問われたのは、いまから1年ほど前の2021年11月のことだった。コネチカット州の裁判官のバーバラ・ベリスが、世界で最も悪名高い“暴言司会者”で陰謀論者でもあるジョーンズに対し、本人不在のまま判決を下したのである。
実際のところ、ほとんどの人はジョーンズは一線を越えたとわかっていた。彼は13年4月に自身が運営するウェブサイト「Infowars」の放送で、20人の子どもと6人の教師が殺された12年の大量殺人事件と犯人の母親は「政府の作戦である」という考えを流したのである。
これを皮切りに、ジョーンズは何度もこの嘘を繰り返すことになる。そして22年10月12日(米国時間)、コネチカット州の陪審員団はジョーンズにすべてを代償として支払わせることを決定したのだ。
テキサス州とコネチカット州の裁判所でジョーンズに下された賠償額は、コネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校銃乱射事件の犠牲者の遺族と、この事件に対応した1人のFBI捜査官に対するもので、合わせて10億1,400万ドル(約1,480億円)に上る。さらに、これに弁護士費用が加わることになる。
偽情報を広める人々へのメッセージ
ジョーンズは“嘘八百”で現実をゆがめることを可能にした「言論の自由」の代償を急速に学んでいる。それは途方もない額だ。しかし、ジョーンズの台頭を長年にわたり許してきたプラットフォームにとっても、教訓があるかもしれない。そしてプラットフォームにも相応の結果を招く可能性もありうる。
「どんな基準で見ても、これは名誉毀損の裁判で陪審員が出した賠償金の額としては巨額と言っていいでしょう」と、フロリダ大学法科大学院の憲法学者のリリッサ・リドスキーは言う。「殺された子どもたちについての嘘から利益を得たジョーンズの行動に対する、陪審員の怒りを反映しているように感じられます」
また、この判決は金銭的利益のためにわざと偽情報を広め、人々の生活を混乱させようと考えている人々にもメッセージも送っている。「よく考えろ、さもなくば同じような多額の損害賠償を請求される恐れがある」──というわけだ。
「彼のような人々に対し、このようなことは文明社会では絶対に許されないという何らかのメッセージを、ここで送る必要があるのです」と、ネットニュースと教育情報のサイト「First Amendment Watch.」の創設編集者も務めるニューヨーク大学のジャーナリズム教授、スティーヴン・D・ソロモンは言う。
ジョーンズの金銭的処罰のレベルを決定した陪審員団は、コネチカット州のサンディフック事件の遺族代理人を務めるクリストファー・マッテイ弁護士の言葉を、確実に重く受け止めたようだ。「自分がどれだけ悲惨な状況を引き起こしたのか理解させることが、あなたたちの仕事です」と、マッテイは最終弁論で述べている。「なぜなら、彼が理解していないことを、あなたがたは非常によくわかっているからです」
偽情報を広める人々へのメッセージ
ジョーンズは“嘘八百”で現実をゆがめることを可能にした「言論の自由」の代償を急速に学んでいる。それは途方もない額だ。しかし、ジョーンズの台頭を長年にわたり許してきたプラットフォームにとっても、教訓があるかもしれない。そしてプラットフォームにも相応の結果を招く可能性もありうる。
「どんな基準で見ても、これは名誉毀損の裁判で陪審員が出した賠償金の額としては巨額と言っていいでしょう」と、フロリダ大学法科大学院の憲法学者のリリッサ・リドスキーは言う。「殺された子どもたちについての嘘から利益を得たジョーンズの行動に対する、陪審員の怒りを反映しているように感じられます」
また、この判決は金銭的利益のためにわざと偽情報を広め、人々の生活を混乱...
詳細はサイトで
https://wired.jp/article/alex-jones-1-billion-damages-free-speech-moderation/