もちろん最賃アップの影響を受ける社員の中には大企業の非正規社員も含まれているが、正社員の中で最も影響を受けているのが高卒初任給だ。

例えば東京都の最賃は1072円。単純に試算すると月額17万1520円(1072円×160時間)だ。

産労総合研究所が調査した2022年度の高卒初任給の平均は17万3032円。企業規模別で見ると大企業では17万6269円、中堅企業(従業員300~999人)で17万1470円、中小企業で17万2077円だった。

最賃が正社員の高卒初任給に肉薄していることがわかる。

そして今年の春闘の賃上げでは高卒初任給が最賃にも達していないことも明らかになった。

連合の2022春闘の企業内最低賃金の回答集計(7月5日)によると、製造業の回答額は16万5962円、金融・保険が17万6050円。

企業内最低賃金は高卒初任給を想定しているが、金融・保険を除いて東京都の最賃を下回る。

主要な産業別労働組合の回答も東京都の最賃を軒並み下回っている。

大手電機メーカーで組織する電機連合が16万6903円、鉄鋼メーカーなどで組織する基幹労連が16万6514円、電力会社で組織する電力総連が16万7400円だ。

日本の基幹産業といわれる自動車産業で組織する自動車総連も16万5059円だ。

自動車総連は2020年の春闘要求で初めて企業内最低賃金を「18歳16万4000円以上」とする労使協定方式を盛り込み、2022年も高卒初任給に準拠した「18歳16万8000円以上」での協定化を掲げた。組合員の賃金アップに向けて率先して戦ってきた代表的な労組と言える。春闘の取り組み方針では地域別最賃を意識し「2022年頃には全国加重平均が1000円程度、とりわけ東京・神奈川では1100円程度となることが見込まれる」と傘下の労働組合に発破をかけている。

しかし自動車総連はベースアップに関しては2019年以降、要求額を示していない。ただし初任給に関してはさすがに最賃の上昇で足下に火が付いた格好になり、最賃基準死守を掲げていたが、結果的には他の産別労組と同様に最賃を割る結果になった。

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