埼玉の朝鮮学校に初めて常勤の「保健室の先生」 全国では他に2カ所だけ、その背景は…
在日コリアンの子どもたちが通う埼玉朝鮮初中級学校(さいたま市大宮区)に1961年の開校以来、
初めてとなる常勤の「保健室の先生」が来た。
コロナ禍で子どもたちが気軽に健康相談できる場所の重要性が叫ばれるなか、公的支援の不足から
外国人学校では保健室の整備は進んでいない現状がある。格差解消を求める声が上がる。
幼稚園児から中学生まで173人が通う学校の保健室で、今春から奮闘する裵佳音(べかのん)さん(30)。
総合病院の小児科で勤務していた看護師だ。
長男の入学手続きの際、そのキャリアを知った鄭勇銖校長に「この学校には保健室の先生がいない。
子どもの話を聞いてくれる人を探している」と懇願されたのが、勤めるきっかけになった。
佳音さんは、県内の在日コリアン男性と結婚した日本人。
「日本の学校しか知らないので、最初は保健室や養護教諭がいないってどういうこと?とピンと来なかった。
急な話で悩んだけれど、引き受けることにしました」と振り返る。
「子どもが体調が悪くて不安でも、こんな環境で寝なきゃいけないのかと…。
親が在日コリアンというだけでこんなに差が出るとは知らなかった」と佳音さんは言う。
朝鮮学校をはじめ外国人学校は、学校教育法で都道府県が認可する「各種学校」として扱われる。
保健室や養護教諭の配置、健康診断や学校医制度など、児童生徒や教職員の健康を守る学校保健安全法の適用外とされている。
文部科学省が2021年に全国161校の外国人学校に実施したアンケートでは、保健室がある学校は75%。養護教諭の配置は35%にとどまった。
学校に対する国の補助金が出ない中、自治体が独自に補助金を支出してきたが、
国が朝鮮学校を高校無償化の対象から外したのを機に打ち切りが相次いだ。
埼玉は10年に県が補助金支給を停止。財政難にあえぐ中、保護者や支援する市民の寄付などで費用を捻出し「保健室の先生」を迎えた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/209686