日本の漁業はこんな小さな魚を獲っても大丈夫なの?
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd3e11a8e17a9adc205ff4de36acbbd26098e778?page=1

小さな魚を獲ってはいけないことは誰にでもわかるはずです。しかし、それは大概、どこか他の国のことで、自分たちには関係がないことと思うことでしょう。しかしながら、そのわれわれの食糧供給に大きくかかわる問題は、ごく身近にあるのです。

 食用にできずエサにしてしまうケースは別にして、日本人は、ほぼ魚を捨てることなく、器用に利用します。このため、とても小さな魚でも、写真のように「ひらき」にしたり、ほとんど食べるところがなくても、魚肉の部分をとって、練り製品などに混ぜたりしてさまざまな工夫を加えていきます。

 もっとも、資源が潤沢にあり、持続性に影響がなければ、小さな魚でも獲って問題はありません。しかしながら、資源が少ないのに、小さな魚を獲ってしまうとなると、話は別です。

 日本の場合は、漁業法の改正で今後改善が期待されますが、そもそも漁獲枠がなかったり、あっても漁獲量より漁獲枠が大きすぎて機能してないケースがほとんどです。このため、漁獲圧力が高くなって、水産資源に非常に悪い影響を与えているケースが随所に見られます。

 ほとんど知られていませんが、日本の漁獲量に対しては、世界銀行や世界食糧農業機関(FAO)が非常に悲観的な見通しを出しています。すでに日本では、資源が崩壊する一歩手前の魚種が多く、資源回復のための時間は限られ、緩い運用はその魚種の資源に致命的な結果をもたらしてしまいます。

 国際的に非常に悲観的に見られている日本の漁業と資源。その実態を知らないこと自体、大きな問題ではないでしょうか?

小さいうちに獲ると魚は卵を産めない
 小さいうちに漁獲してしまうと、成魚になって卵を産んで子孫を残す機会を奪ってしまいます。これを「成長乱獲」と言います。

 魚を減らすことなく獲り続けられる数量をMSY(最大持続生産量)と言います 。産卵する親をサステナブル(持続可能)な量に維持して、魚を獲り続けることが世界の漁業の常識であり課題です。

 海の憲法と呼ばれる国連海洋法や2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)の14(海の豊かさを守ろう)にも、MSYによる管理が明記されています。

日本では、水産資源管理の不備で多くの魚種が減少しています。主要魚種の1つであるマアジの漁獲量も減少傾向にあります。マアジは1歳で尾又長16~18センチに成長する魚です。ほぼ100%成熟するのが2歳で同22~24センチです。

 写真にあるような5~10センチのマアジは産卵できるまで成長せずに漁獲されたものです。しかも小さくても食用になるのはまだ良い方で、実際にはマアジの約3割(2020年・農林水産省)も養殖のエサ向けなど、非食用向けとなっています。小さな魚まで獲る国、それは残念ながら日本のことです。これから、それらの例を挙げて行きましょう。

 上のグラフをご覧下さい。ほとんど0~1歳の幼魚の内にマアジが漁獲されていることがわかります。マアジの寿命は5年前後と考えられています。これでは成長して産卵する機会を奪ってしまっていますので、資源量は増えようがありません。

 下の写真は小さな甘エビです。皮肉なことに、売り場などで見る幼魚、小さな甲殻類などは国産ばかりです。科学的根拠にもとづく水産資源管理が機能している漁業先進国である北米、北欧、オセアニアなどでは、日本と違い、まだ価値が低い小さな魚や水産物はもったいないので漁獲しません。日本が輸入しているのは、価値も価格も高い輸入水産物です。このため「あれっ?」と思う小さいのは国産の魚介類ばかりなのです。

 小さな毛ガニやズワイガニも見かけます。これらのカニはエビのように丸ごと唐揚げにできません。小さなカニはそもそも可食部がほとんどないのです。もっと大きくなってから獲れば良いのではないでしょうか?

 オスに比べて小さなズワイガニのメス。セイコガニなどと呼ばれて売られていますが、日本がズワイガニを輸入する北米等は、メスの漁獲を禁止していて、獲れても逃がしています。

 漁獲枠がなかったり、漁獲枠があっても大き過ぎたり、または個別割当方式になって配分されていなかったりでは、自分が獲らなければ他の人に獲られてしまうという発想になってしまいます。これを「共有地の悲劇」と言います。

 その結果、将来にとって悪いと分かっていても、小さな魚や甲殻類を獲ってしまいます。そして獲れなくなると、さらに頑張って小さくても獲り、さらに減って行きます。これが多くの魚種において全国各地で起こっている悪循環です。