福島第一原発、建屋水没させデブリ取り出す工法 変更繰り返した末、実現性見通せない案 事業難航の象徴
東京電力福島第一原発の事故収束作業で最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向け、原子炉建屋の地下を含めて構造物で囲い、丸ごと水没させる工法が浮上している。前例のない大規模工事が必要で、実現には疑問符が付く。デブリ取り出しはこれまでも方針変更を繰り返しており、雲をつかむような案が出てきたこと自体が難航を象徴する。
◆「自信がない」専門家ですら弱気
「世界で初めて。技術的に相当困難」「自信がない」「これを見て『有望』と言われても困るでしょう」
事故収束に向けた技術支援を担う原子力損害賠償・廃炉等支援機構の池上三六いけのうえさんろく・廃炉総括グループ執行役員は、3号機での新工法を盛り込んだ提言を説明する11日の記者会見で、弱気な発言を繰り返した。
新工法は、タンカーの船体工事に使われる「船殻せんこく工法」を応用。水圧に強い構造物で囲うのが特徴で、機構は建屋の地下にトンネルを掘り、鋼鉄製の四角い部屋が連なった構造物で建屋全体を取り囲むことを検討している。
実現すれば、建屋に満たした水で放射線を遮ることができ、作業の安全性が高まる。一方で、建屋を水没させると、デブリに触れた高濃度汚染水が15万トンほど発生する見通し。敷地内で処理水を保管するタンク約150基分に相当し、漏えい事故が起きたときのリスクは計り知れない。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/209821