便失禁に温水洗浄便座の使い方が関連 | 臨床ニュース | m3.com
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日本の家庭の約8割に普及している温水洗浄便座。なかには「温水洗浄便座でないと排便が難しい」という人もいるほどだが、使い方によっては便失禁の危険因子となりうるとの検討結果が明らかになった。一方、使用の中止により、46%に臨床的改善が確認されたという。亀田総合病院消化器外科部長の角田明良氏が、第77回日本大腸肛門病学会学術集会(2022年10月14日-15日、千葉市)で報告した。(取材・まとめ:m3.com編集部・坂口恵)
55%が排便前後に温水洗浄便座を使用
角田氏はこれまでにも、千葉県鴨川市周辺住民5000人超を対象に温水洗浄便座の使用習慣と肛門掻痒症の関連を調査し、55%の人が排便前後に温水洗浄便座を使用していることを報告した。また、多変量解析から、「男性」「50歳未満」「排便前の温水洗浄使用」「排便後の温水洗浄使用」「便失禁」が、肛門掻痒症の有意な危険因子であったことを明らかにしている。
今回、角田氏は2019年6月から2022年3月にかけて同病院の直腸肛門専門外来を受診した肛門失禁(便失禁、粘液失禁)患者145人のうち、習慣的に温水洗浄便座を使用している便失禁患者101人で、このうち粘液失禁のみの16人を除く、便失禁を呈した85人を対象に検討を実施した。
初診時に温水洗浄便座の使用の有無を尋ねた上で、「使用している」と回答があった場合、使用を止めるよう指導した。ベースライン時およびフォローアップ時の便失禁重症度スコア〔Fecal Incontinence Severity Index(FISI)〕、そして温水洗浄便座の使用状況の変化を解析した。
「1日4回以上」「1回30秒以上」のケースも
患者平均年齢は75歳(37-92歳)、女性の割合は65%だった。ベースライン時の温水洗浄便座使用状況は、「1日2回以上使用」と回答した人は50人、「1日4回以上使用」と回答した人は18人以上いた。洗浄の強度(weak-moderateまたはstrong)については、「strong」と回答した人は23人。1回当たりの洗浄時間は6-10秒が35人と多かったが、30秒以上も9人いた。
フォローアップできたのは85人中81人。ベースライン時からの温水洗浄便座の中止期間は4週間(中央値)で、臨床的改善(「ベースラインからのFISI点数の半減」と定義)が得られた割合は37人(46%)、「このうち、便失禁が全くなくなった人が37%を占めた」(角田氏)。
「肛門括約筋圧の低下」と「1日2回以上の使用」が有意に関連
便失禁重症度に関連する因子を解析したところ、「肛門括約筋圧の低下」と「1日2回以上の温水洗浄便座使用」が有意であった。
温水洗浄便座の使用が便失禁を引き起こす機序について、角田氏は「肛門括約筋圧が低下している状況での温水洗浄の使用により、洗浄水が直腸に入り、浣腸効果で一部の便が排出される。しかし、トイレから出てしばらくすると直腸にとどまっていた洗浄水が、便と混じって肛門外に降りてくるために便失禁が起こるのではないか」と推察した。