習主席だまし討ち′モ錦濤氏「排除」の真相 赤いファイルの人事に異議、職員に耳打ち…「独裁体制」誕生の瞬間
https://news.yahoo.co.jp/articles/5335e119af5b3a39555cf4d3e5a7506916fec318
1週間にわたって開かれた共産党大会の閉幕式があった22日、会場の北京の人民大会堂に入ったばかりのカメラの先は一斉に、最高指導部の政治局常務委員らや、その経験者らが鎮座する壇上中央に向けられた。
習総書記の左隣に座っていた胡前総書記が途中で退席した。外国メディアはその一部始終を報じ、さまざまな憶測を呼んだ。
こうした騒動を打ち消すかのように、その日の夜、国営新華社通信社が英語版の公式ツイッターで「胡錦濤氏は体調が優れなかったので、彼の健康のために係員が会場の隣の部屋まで付き添った。いま体調はだいぶ良くなっている」と書き込んだ。
だが、中国国内でツイッターは使えない。外国向けの「釈明」だったことは明白だった。では、一体何が繰り広げられていたのだろうか。
会場にいたメディア関係者や閣僚級経験者を親族に持つ党関係者らの証言をもとに、当時の真相を探りたい。
最初に動いたのは、胡氏の左隣にいた序列3位の栗戦書・全国人民代表大会委員長(72)だった。
栗氏は、習氏が1980年代、河北省の地方政府をしていたときからの旧知の仲で、「兄さん」と呼び合うほど慕っていたという。
胡氏の前の卓上に置かれた赤い表紙のファイルを、栗氏が取り上げようとした。これに胡氏が抵抗して言い争いになりかけた。
その時、習氏が壇上左手に向かって目配せをすると、白髪交じりの男性が小走りに入ってきた。
男性は孔邵遜・中央弁公室副主任。中央弁公室は習氏の身辺警護から日常スケジュールを管理する直轄部門で、そのナンバー2だ。孔氏は習氏から耳打ちされると、慌ただしく走り去った。
しばらくすると、長身の男性が入ってきた。この男性は、胡氏の警護をしている中央警衛局の職員だった。
この職員は習氏から耳打ちされると、栗氏からファイルを受け取り、胡氏の右腕を抱えて強引に立ち上がらせ、舞台袖へと連れて行った。
去り際に胡氏は興奮気味に習氏に語り掛けたが、表情を変えず軽くうなずくだけだった。
このファイルには、何が書かれていたのだろうか。前出の党関係者が解説する。
「ファイルには、この日の朝に選出された中央委員の名簿が入っていた。
名簿には胡氏が推薦したメンバーがほとんど入っていなかった。
これを見た胡氏は、自らの意に反する最高指導部人事になることを察し、異議を唱えようとしたのだ」
中央委員は約9500万人の共産党員の中から選ばれた205人だ。
中国の重要政策について話し合うほか、政治局員と政治局常務委員を選ぶ権限を持っている。
つまり、中央委員のメンバーの顔触れが、最高指導部の人事の動向のカギを握るのだ。
胡氏が意中の後継者として推薦していたのが、胡春華・副首相(59)だった。
2人は同じ共産党のエリート集団「共産主義青年団(共青団)」出身だ。
今回政治局員から常務委員になるのは確実視されていたが、中央委員に降格させられたのだ。
代わりに抜擢(ばってき)されたのが、過去に習氏と勤務したことのある人物ばかりだった。
この日、名実共に「習近平独裁体制」が誕生した瞬間だった。