https://www.asahi.com/articles/ASPB16TRQP9XIIPE018.html
コロナ禍で消費減の小豆、新商品続々
あんこに使われる小豆の在庫量が増えている。コロナ禍による土産物の需要減が響いているからだ。一大産地の北海道十勝地方では、あんこなどの小豆商品をもっと食べてもらおうと、新商品が続々と登場している。
十勝地方で6店舗を展開する名物パン店「満寿屋（ますや）商店」は8月末、帯広市の旗艦店「麦音（むぎおと）」で、あんことチーズをコラボさせたパン「枡（ます）〜プレミアムあんチーズ」（330円、以下すべて税込み）の販売を始めた。十勝産小麦を100%使用したパン生地にチーズを練りこみ、フレンチトースト液につけ込んだパンに、自家製小倉あんと、十勝のチーズ工房2社と共同開発したナチュラルチーズ「枡」を挟んだ。食べる前に電子レンジで温め、チーズがトロリと溶けたら完成だ。登場早々、同店の売り上げトップ10に入る人気商品になっている。
広報担当の大川原典宏さんは「地域の生産者を応援するパン店として、少しでも力になりたかった。『甘い』と『しょっぱい』が仲良くなった、あんことチーズの絶妙なバランスを味わってほしい」と話す。
開発のきっかけは、十勝地方の生産者団体や地元のフリーマガジン「chai」、地域の飲食8店が協力したキャンペーンだ。「あずき食べてみるく？」と銘打ち、コロナ禍で苦戦が続く小豆業界と牛乳業界を盛り上げようと9月いっぱい実施した。
帯広市のジェラート店「ウエモンズハート」も、「『ミヨばあちゃん』のあんこパフェ」（550円）をキャンペーンをきっかけに新たにつくった。自社牧場の牛乳を使ったソフトクリームに、広瀬文彦代表の家に代々伝わるレシピで作ったあんこと、黒砂糖を混ぜたわらび餅を添えた。
同店ではあずきジェラートはあったが、あんこそのものを使ったメニューは初めて。秘伝のあんこも初披露だ。店長で広瀬代表の妻・真由美さん（69）が、義母のミヨさん（90）から直接教わった。一族の中には、ご飯に直接乗せて食べていた人もいたほど好評の味。「塩味がしっかり効いたあんこで、ソフトクリームとも合う。開拓時代から続いているかもしれない十勝の家庭のあんこの味を楽しんでほしい」と真由美さん。広瀬さん方ではかつて小豆を作っていたこともあり、「生産者の苦労も知っており、十勝の小豆にもっと光が当たってくれれば」と話す。
農協でも取り組みが進む。
更別村のJAさらべつでは5月、地元の「お菓子のニシヤマ」と協力し、「手作りもなかセット つぶあん＆もな缶」（1890円）を開発した。更別産100%のあんこを、食べる直前に、缶詰に入った最中の皮に乗せたり、挟んだりして食べる。同店の今井良幸代表は「もっと多くの人に更別の小豆を食べてもらいたいと思った。コロナで増えたおうち時間に楽しんでもらえたら」。
地元産の小豆「きたろまん」を旭川の製あん業者に農協職員が自家用車で毎回運んで、他の産地の小豆と混ざらないように加工してもらっている。JA担当者は「土作りからこだわりを持って育てている更別の小豆。なかなか知られていないが、これを機会に全国に広がっていけば」と話す。
JA十勝清水町が開発したのが紙製容器入りの「焙煎（ばいせん）あずき茶」（希望小売価格150円）。あずき茶は独自の有機肥料「しみず有機」を用いて栽培した「とれたんと」ブランドの小豆を使っている。商品化されていたティーバッグに加え、5月に紙製容器入りドリンクとして新発売した。担当者は「小豆低迷の時期、少しでも組合員の力になりたい。北海道のソウルドリンクをめざす」と意気込む。
◇
北海道は小豆の全国生産量の約9割を占める。あんこが使われた土産物の菓子は多く、コロナ禍の影響が直撃している。
ホクレンの推計によると、道産小豆の年間消費量は、コロナ禍前の2018年産は約4万7400トンだったのに対し、19年産は約4万トンに減少。この20年間で最低だった。繰り越し在庫は9月末時点で昨年同期の約3万2500トンを大きく上回り、年間消費量を上回る約4万8千トンの見込みだ。
ホクレンでは、外国産小豆を使用している菓子業者などに道産小豆への転換を働きかけており、20年産小豆の年間消費量は約4万2千トンを見込み、若干回復傾向にある。ホクレンは9月、道産小豆を使った「あずきゼリー」を、道内の小中学校給食用に約15万個無償提供した。提供先で食育活動も展開し、道産品に興味を持ってもらい、需要拡大につながることを狙う。
ホクレン農産部雑穀課は「コロナで厳しい時期が続くが、需要が回復した時に作付けが少なく品不足にならないよう、面積維持のために小豆の価格は下げないようにしたい。風味の良さと、安定供給、安心安全をPRしていきたい」と話す
