ここ数年急増している外国企業による対内直接投資の中には、永続的に日本で事業を行うというよりは、短期的に最大限の利益を稼ぎ出してその目的を達成すれば撤退するというようなものも含まれている。
そして、投資リターンの回収過程において日本で課される税金コストを極小化するために、極端な租税回避スキームを仕組むことも行われている。これに対し、日本企業による海外直接投資の特徴としては、生産・販売拠点を海外に移転し、現地で永続的に事業を展開しようとする傾向が見られる。
そして、現地法人の税引後利益を日本の親会社への配当に向けるよりは再投資に向ける傾向が強くなっている。財政的視点から見た場合、日本企業の海外直接投資の拡大は、日本にとって生産・販売拠点という税源そのものが海外流出することを意味し、また、現地法人の再投資の拡大は日本における課税機会の喪失の可能性が高まっていることを意味する。
このように、今日の日本においては対内・対外直接投資のいずれの局面を見ても、税源・税収確保の点で問題視すべき事態が生じていると思われるが、本稿では、より実態の捉えにくい部分があると思われる日本企業による海外直接投資活動に着目し、タックス・ヘイブン税制や外国税額控除制度の適用上の問題等について考察している。

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/40/fuzimaki/hajimeni.htm