伝説のオートレストラン跡地の「鉄剣タロー食堂」 魅惑の異世界、再び 埼玉・行田市
レトロ感あふれる食品自動販売機に壁を埋めるグラフィティ…。ピンクとブルーに光る照明もあいまって、怪しげな雰囲気にドライバーが吸い寄せられる-。埼玉県行田市の国道17号で名をはせたオートレストラン「鉄剣タロー」。新型コロナウイルス禍で令和2年5月に惜しまれつつ閉店したが、跡地に今年9月、食堂が開店した。魅惑の異世界の再誕となるか。
鉄剣タローの開業は昭和63年。調理されたうどんやチーズバーガーなどが出てくる自販機を目当てにドライバーが押し寄せた。「ストリートファイター」などのアーケードゲーム機を遊びに来る客も多くいた。
オートレストランはかつて各地で流行したが、コンビニエンスストアの台頭などで姿を消していく。だが鉄剣タローは自販機が壊れても遠方まで出向いて同じ型のものを買い取るなどして店を守り続けた。平成の後半頃には自販機のレトロな雰囲気に再び人気が集まり、伝説の店となった。
ピンクとブルーの照明が入り交じった怪しげな空間もファンに愛された。約10年前には映画「TOKYO TRIBE」のロケ地となり、撮影で描かれたグラフィティは名物となった。
しかし、新型コロナ感染拡大で窮地に追い込まれる。基本的に無人店で感染防止対策が講じにくく、令和2年4月に緊急事態宣言を受け臨時休業に入り、同年5月にそのまま閉店した。
それから2年半。聖地の一角に食堂が開業した。その名も「鉄剣タロー食堂」で、店主は近くに住む猪上協一さん。サラリーマン時代の経験から手頃な価格で食事が楽しめる店を作りたいと思い立ち、同時に子供のころから知る鉄剣タローの建物を「眠らせるのは早い」と考え開店を決めた。
看板商品はカレーとそばで500円という破格のセット。最近売り出したラーメンはクセになる味がおすすめだ。食堂は自販機の仕込み用だったスペースにあるが、希望すればグラフィティの空間で往時をしのびつつ食べることができる。
今後、食堂が軌道に乗れば鉄剣タローの建物を活用して「楽しい場所を作りたい」と猪上さん。鉄剣タローの経営者だった女性(68)は「鉄剣タローが残り続ければありがたい」と次代に思いを託した。
https://www.sankei.com/article/20221030-WLJ25PQAJFIW7AANK3KIRR7OVU/
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