ガス不足懸念の欧州、暖冬の影響で供給過剰へ?


【ロンドン】欧州では急速に天然ガスの供給がだぶついている。これを受けてガス価格は下落。欧州大陸がロシアへのエネルギー依存から抜け出そうとする中、冬の燃料不足と配給の懸念は和らいだ。

 ほんの数カ月前には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧州がロシアのガスから軸足を移し、ロシアが制裁の報復として輸出を制限したため、政府当局者や企業幹部、アナリストは欧州大陸が冬の間に必要な燃料を十分に確保できないのではないかと懸念していた。政府は消費者や企業に燃料の節約を促し、そうしなければ強制的に配給すると警告し、米国やカタールなどが出荷したガスを大量に買い入れた。

 こうした対策と、最近の季節外れの暖かい気候のため、陸上や沖合に浮かぶタンカーに大量のガスが貯蔵されることになった。

欧州の天然ガス価格は8月下旬の史上最高値から70%以上急落している。

 ロシアのガス供給から軸足を移すための大規模な取り組みにより、欧州各国はロシア政府が最初に輸出を削減したときに懸念されたよりも強い立場になった。欧州連合(EU)と各国政府は、企業や消費者に需要の削減を促す一方で、ガス備蓄を義務化した。EU全域のタンクなど貯蔵庫は94%埋まっている。

 政府や企業の関係者は、価格下落を安堵(あんど)の表情で迎えている。アナリストによれば、冬が特別に寒いか、ロシア以外の供給源からのパイプラインが大きなダメージを受けない限り、欧州が危険なほどガス不足に陥る可能性は低い。

 価格の下落は、ある程度は欧州のガスインフラの限界を反映している。欧州にもっと大きな貯蔵スペースがあるか、タンカーで運ばれてきた極低温のLNGをガスに戻せるターミナルがあれば、取引業者は冬に貯蔵するガスを入札し続けることができただろう。しかし、貯蔵所が満杯になりつつある現在、ガスを貯蔵するスペースを見つけることは困難な状況になっている。

https://jp.wsj.com/articles/europe-once-fearing-gas-rationing-this-winter-has-a-glut-11666941559
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