公園や墓地に野犬が出没、人にかみつき車にも傷?…捕獲へ檻を増設・アプリで目撃情報共有(読売新聞オンライン)
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山口県周南市は、都市公園「周南緑地」(約80ヘクタール)などに出没する野犬対策に力を入れている。捕獲作戦の効果は徐々に現れているものの、人にかみつく被害もあることから、警戒を続けている。
周南緑地に隣接する大迫田共同墓地。整然と並ぶ墓石の間からじっとこちらを見つめる野犬の姿があった。両親の墓参りに来ていた女性(79)は「落ち着いて手も合わせられない」とため息をついた。
人にかみつく例も
県周南環境保健所によると、野犬は、少なくとも20年以上前から周南緑地一帯に生息している。身を隠しやすい広大な公園で、捨て犬が繁殖したとみられる。
市民が野犬にかまれる被害も相次いでいる。2017年度1件、18年度4件、19年度2件、20年度5件。21年度は2件で、今年3月には散歩中の70歳代男性が脚をかまれた。
「市民の命に関わる問題。できることは全てやる」と藤井律子市長は強調する。
19年7月、県や周南署と連絡協議会を設け、対策に本腰を入れ始めた。野犬対策は、保健所を管轄する県の業務だが、連携して取り組むことを決定。捕獲檻(おり)や監視カメラを増やし、パトロールを強化した。
市が20年9月に始めた、野犬の目撃情報を共有するスマートフォンのアプリも一役買っている。市民に目撃場所や日時を入力してもらい、その情報を基に捕獲作業に当たる。今年9月末までに累計2324件寄せられ、市は「捕獲が円滑になった」という。
周南緑地(大迫田共同墓地含む)での捕獲数は、18年度の188匹から19年度は304匹と6割増えた。その後、20年度260匹、21年度185匹と減少傾向にある。
また、4月以降、人がかまれる被害は確認されていない。保健所に寄せられる目撃情報や苦情も少なくなっており、連絡協が8月に開いた会合で、市は「一定の成果が出ている」との認識を示した。
捕獲率向上に向け、県は、囲い檻の扉を遠隔操作して捕獲する装置を開発し、周南緑地に置いた。
「かわいそう」と餌やり、捕獲の妨げに
そうした対策に、一部の人による餌やりが水を差している。餌をもらって食欲を満たした野犬は捕獲檻にかからず、自然繁殖につながる。「かわいそう」と思っての行動が、捕獲態勢の強化につながり、野犬が殺処分される悲しい結末を招くことになる。
むやみな餌やりは、市迷惑行為禁止条例に抵触する。市は、周南署と連携して、悪質な行為には注意文書を渡すなどしているが、現時点であまり改善は見られない。市環境政策課の担当者は「粘り強く理解を求めていく」と話している。
車に傷、住民困惑
周南市の周南緑地近くの住宅地で、乗用車に野犬とみられる動物がかみついたり、ひっかいたりしたような傷が相次いで見つかり、困惑が広がっている。
周南署などによると、8月中旬、遠石地区の住民が車体に複数の傷を見つけ、署に相談した。泥よけのフェンダー付近にひっかき傷や小さなへこみがあり、唾液のような液体がついていた。別の住民の車にも似たような傷が見つかった。
署は野犬の牙や前脚の爪で付けられた傷とみている。住民から相談を受けた自治会長(72)は「理由がよく分からないだけに気味が悪い」と不安を募らせる。