「トランプか、トランプ以外か」戦略不発 バイデン大統領ピンチ 1週間後に迫る米中間選挙、共和党に勢い

 【ワシントン=吉田通夫】米中間選挙は米東部時間8日の投開票まで一週間。激しい物価高騰を受け、バイデン大統領と与党民主党の支持率は低迷。2020年の大統領選結果を否定するトランプ前大統領のもと、野党の共和党が勢いを増している。バイデン氏はトランプ氏とその熱狂的支持者を民主主義への脅威と訴えるが、支持は十分に広がっていない。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が各種世論調査を分析したところ、定数435の下院で共和党が優勢なのは228議席と過半数を確保する勢い。民主党の優勢は174議席にとどまり、残る33議席が接戦になっている。
 定数100の上院も、今回選挙のある34議席と補欠1議席の計35議席に非改選を合わせた選挙後の勢力見通しは民主党45議席に対し、共和党が48議席と優位に選挙戦を進める。残る7議席は接戦。民主党は夏に支持を取り戻したものの、再び失速している。

 トランプ前政権時に保守色を強めた連邦最高裁は6月下旬に人工妊娠中絶の権利を否定したほか、銃規制などでも共和党寄りの判断を相次いで下した。バイデン氏はトランプ氏と熱狂的支持者の増長に危機感を強め、「米国の根幹を脅かす過激思想の象徴」と激しく非難してきた。
 しかし、一向に鎮まらない物価高騰によって再び逆風が強まっている。バイデン氏が選挙戦で「トランプ氏か否か」を選択する戦略に持ち込んだこともあり、人工妊娠中絶や銃規制、移民問題など個別政策の議論は深まっていない。
 共和党内には「米国第一主義」を掲げ、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの巨額な軍事支援を見直すべきだとの意見もある。議会で多数派を握れば、ウクライナ情勢にも影響する可能性がある。

東京新聞 2022年11月1日 20時42分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/211459