「ミュー粒子」で台風の構造初観測 東大など、英科学誌で発表
ミュー粒子の観測による台風の密度を表した図。緑から赤になるに従い、
密度が低下する=田中宏幸・東京大国際ミュオグラフィ連携研究機構長提供
宇宙から飛んでくる素粒子の一種「ミュー粒子」を使い、台風の構造を観測することに世界で初めて成功したと、
東京大などの国際チームが英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。
ミュー粒子はこれまで遺跡や火山、原発などの内部構造の透視に用いられてきたが、大気現象の観測は初めてという。
ミュー粒子は、宇宙から降り注ぐ宇宙線が地球上空約300キロの大気と反応してできる。
極めて強い透過力を持ち、同様に物質を透過するエックス線を使うレントゲン撮影のように、内部の構造を透視できる。
研究チームは鹿児島・桜島に観測機器を設置し、2016~21年に九州に上陸するなどした七つの台風を観測した。
台風の中を通り抜けたミュー粒子の数の時間変化から、密度や動きを調べた。
台風の密度差は浮力を表すため、密度構造を示すことで台風の強さの推定に役立つという。
チームの田中宏幸・東京大国際ミュオグラフィ連携研究機構長は
「台風は衛星で上空から観測されているが、今回初めて横から撮影できた。
今後、台風の中心と周囲との密度勾配をリアルタイムに観測するなどの改良を重ねれば、
測候所のない場所での観測や早期警報システムなどへの応用もできるのではないか」と話している。【垂水友里香】
https://news.yahoo.co.jp/articles/97686da4f725aee9e9a925bd84d38bf61898b682