https://www.jst.go.jp/pr/announce/20190116/index.html

ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンともに
正味最高熱効率50%超を「産産学学連携」で達成
〜燃焼、摩擦、ターボ過給、熱電変換の技術で環境にやさしい内燃機関へ〜

ポイント
乗用車用のガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンともに、正味最高熱効率50%を上回る研究成果を得ることに成功した。
この高い熱効率は、超希薄燃焼(ガソリン)と高速空間燃焼(ディーゼル)という燃焼技術と、両エンジン共通の損失低減技術をそれぞれ統合した結果得られたものである。
これらの成果は、複数の企業と大学が連携する「産産学学連携」で得られたものであり、プロジェクト終了後もこの体制を持続させる取り組みを、産学が開始している。
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的燃焼技術」(プログラムディレクター:杉山 雅則(トヨタ自動車株式会社))(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)【理事長 M口 道成】)において、慶應義塾大学の飯田 訓正 特任教授、京都大学の石山 拓二 教授、早稲田大学の大聖 泰弘 特任研究教授らは、乗用車用のガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンともに、正味最高熱効率注1)50%を上回ることに成功しました。

現在市場に出ている乗用車のエンジンの熱効率は40%程度です。本プロジェクトは、過去40年間かけて自動車企業が10%ほど向上させた熱効率を、5年間という短期間でさらに10%引き上げるという野心的な目標を掲げていました。

本プロジェクトでは、ガソリンエンジンについては、超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)注2)、ディーゼルエンジンについては、高速空間燃焼の実現に成功しました。さらに両エンジンに共通する損失低減のための研究開発によって、機械摩擦損失の低減技術、ターボ過給システムの効率向上技術、および熱電変換システムの効率向上技術を開発しました。これらの技術を統合した結果、ガソリンエンジンでは51.5%、ディーゼルエンジンでは50.1%の正味最高熱効率を得ることができました。

このほか、本プロジェクトでは、東京大学の金子 成彦 教授らにより、自動車エンジンの3次元燃焼解析ソフトウェア「HINOCA(火神)」、PM(粒子状物質)生成のモデル「RYUCA(粒神)」、および自動車エンジン燃焼のモデルベース制御システム「RAICA(雷神)」の構築にも成功しています。

今回の成果は、今後数十年間は主流と予測されている内燃機関を搭載した自動車による環境負荷を低減し、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献するものです。さらに、燃焼分野の基礎科学を発展させると同時に、日本の産業競争力の強化をもたらすものです。

これらの研究成果は、「産産学学連携体制」注3)を構築し機能させることによって、オールジャパンのアカデミアの基礎研究力を引き出し成し遂げられました。この体制は、本プロジェクトが終了した後も持続するよう、産学の取り組みが開始しています。

上記の詳細は、2019年1月28日開催のSIP革新的燃焼技術の最終公開シンポジウムで発表されます。